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平成24年第三回定例会会議録(第3日 9月25日)

1.会期

二十九日(第三日)

九月二十五日(火曜日)

2.開議並びに散会

午後二時開議

午後五時四十六分散会

3.出席議員

(三十名)

一番 加藤 博司議員

二番 山本 理恵議員

三番 瓜生 正高議員

四番 富永 一議員

五番 染谷 眞人議員

六番 木村 克一議員

七番 青木 かの議員

八番 河井 志帆議員

九番 奥村 暁子議員

十番 小栗 智恵子議員

十一番 石島 秀起議員

十二番 礒野 忠議員

十三番 中嶋 ひろあき議員

十四番 今野 弘美議員

十五番 墨谷 浩一議員

十六番 堀田 弥生議員

十七番 田中 耕太郎議員

十八番 渡部 恵子議員

十九番 志村 孝美議員

二十番 石田 英朗議員

二十一番 鈴木 久雄議員

二十二番 高橋 伸治議員

二十三番 増渕 一孝議員

二十四番 原田 賢一議員

二十五番 押田 まり子議員

二十六番 植原 恭子議員

二十七番 田中 広一議員

二十八番 中島 賢治議員

二十九番 渡部 博年議員

三十番 守本 利雄議員

4.出席説明員

区長 矢田 美英君

副区長 小泉 典久君

副区長 吉田 不曇君

教育長 齊藤 進君

企画部長 中島毅君

総務部長 島田 勝敏君

防災危機管理室長 中島 佳久君

区民部長 浅沼 孝一郎君

福祉保健部長平林 治樹君

高齢者施策推進室長 小倉草君

保健所長 和田 哲明君

環境土木部長 宮本 恭介君

都市整備部長 岸田 里佳子君

会計管理者 平沢 康裕君

教育委員会事務局次長 新治満君

監査事務局長 坂田 直昭君

企画財政課長 黒川眞君

広報課長 信坂 留吉君

総務課長 長嶋 育夫君

5.議会局出席職員

議会局長 田野 則雄君

庶務係長 渡辺 忠之君

議事係長 荻原 雅彦君

調査係長 金田 敏明君

書記 長田 基道君

6.議事日程

日程第一
一般質問

日程第二
議案第五十五号 平成二十四年度中央区一般会計補正予算

日程第三
議案第五十六号 平成二十四年度中央区介護保険事業会計補正予算

日程第四
議案第六十九号 西仲橋架替工事(下部工)請負契約の一部変更について


午後二時 開議

○議長(石田英朗議員)
 ただいまより本日の会議を開きます。


○議長(石田英朗議員)
 これより本日の日程に入ります。

 日程第一、「一般質問」を行います。順次、質問を許します。

 十七番田中耕太郎議員。

十七番 田中耕太郎議員登壇

○十七番(田中耕太郎議員)
 中央区議会みんなの党の田中耕太郎であります。平成二十四年第三回区議会定例会に当たり、会派の一員として、質問通告書に従い、区長並びに関係理事者に対し質問をいたします。明快な御答弁を期待するものでございます。なお、御答弁の内容によりまして、再質問をさせていただきます。

 さて、尖閣諸島及び竹島は、我が国固有の領土であることは歴史的、国際法的にも明確であるにもかかわらず、本年八月、香港の民間活動家らが尖閣諸島、魚釣島に不法上陸し、韓国の李明博大統領が竹島に上陸する事案が発生するなど、我が国の領土保全、外交は極めて不安定な状況になるおそれがあります。また、欧州の金融危機も依然予断を許さない状況にあり、EU各国は六月下旬の首脳会談で多くの危機対策に方向性を示したものの、その後、具体的な方策は打ち出せずに危機再燃のおそれがあります。世界経済、日本経済にも深刻な影響があり、その影は深いものがあるやもしれません。

 日本国内においても、国政では与野党を問わず政局の不安定感は否めず、山積する目前の課題、さらには中長期的な課題への対応もなおざりな状況が続いており、国民、区民は大きな不安を感じています。

 このように、国内外を取り巻く政治・経済環境は厳しさを増しておりますが、中央区は住民と直接向き合う基礎自治体として、今できることを着実に、地道に取り組んでいくことを強く期待しております。

 経営破綻した日本航空が二年七カ月で東京証券取引所に再上場し、過去に例がないスピード再建と、先日、報道がなされました。その再建に手腕を振るった稲盛和夫名誉会長は、事業計画について、楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行することが肝要であると説いています。構想や、その実行段階においては、型にはめず楽観的に伸び伸びと行ったほうが、えてしてうまくいくものの、計画については悲観的に、最も厳しい事態を念頭にすべきという考え方であり、このことは企業経営のみならず、自治体運営においても大いに参考にすべき考え方と言えます。このような観点から、本区の行財政計画とその見通しについて質問をさせていただきます。

 増加し続ける定住人口を背景に、本区の行政ニーズは子育て支援や教育、高齢者福祉、防災・防犯、企業の活性化をはじめとして、質、量ともに増大し続けており、平成二十四年度の一般会計予算は七百八十九億六千九百八十八万八千円と、前年度当初予算七百四億五千三百十九万四千円に比べ八十五億一千六百六十九万四千円もの増額であり、政策的経費である一般歳出においては一二・一%の増であります。中央小学校・中央幼稚園及び明石小学校・明石幼稚園の改築に約二十八億円、新川児童館新施設整備を含めた明正小学校・明正幼稚園の改築に約四億円、特別養護老人ホーム、マイホームはるみ等複合施設の改修に約十億円、区民健康村ヴィラ本栖の改修に約九億円など、既存施設等の更新に多額の経費が計上され、早期に都市基盤整備が進んだ本区は、今後もその傾向が続くことが確実です。

 そして、これらの財源として、施設整備基金、教育施設整備基金、財政調整基金及び減債基金からの繰入金並びに特別区債が大幅に増加しており、繰入金は前年度比五八・八%増の三十八億九千二百四十八万七千円、特別区債は一二○・九%増の二十二億九千三百万円が計上されています。無論、これらは長期利用される施設整備のための計画的な財政運営であり、大きな問題はないと考えておりますが、平成二十二年、二十三年度の二カ年で百億円超の各種基金取り崩しと十億円超の区債が新たに発行された一方で、剰余金等は施設整備基金並びに財政調整基金に積み立てられており、積み立てと取り崩しのバランスや方向性を今後どのように図っていくのかは重要な課題であります。

 現在の本区の中期財政計画は、基本計画に合わせて弾力的に行われてきたと考えられますが、今後の人口推移や行政ニーズの増大・多様化を踏まえて、より具体的に、計画的に中央区独自の中期財政計画を策定するべきではないでしょうか。二十三区内におきましても、足立区が平成二十一年度から八カ年先までを念頭に置いた中期財政計画、施策別投資事業計画を作成しており、中期的な施策計画と連動しながらの財政運営を試みており、一定の成果があるとされています。

 そこで、まず質問させていただきます。

 中期財政計画を本区でも取り入れ、現在改定中の区の基本計画と連動させながら財政計画を策定し、あわせて各種基金のあり方についても明示することが必要であると考えますが、御見解をお知らせください。

 次に、特別区財政調整交付金についてお伺いいたします。

 特別区財政調整制度は、都と特別区の役割に応じて財源を割り振ること、特別区の間で行政水準の均衡を図ること並びに特別区の自主的な運営を図ることを目的に行われております。特別区財政調整交付金は、本来は市町村税、すなわち基礎自治体が賦課、徴収すべき市町村民税法人分、固定資産税、特別土地保有税の調整三税を都と区の共有財源とし、区五五%、都四五%が留保され、区は五五%のうち、算定の上で二十三区に再配分されるというものであります。区にとっては貴重な自主財源が制約を受けるかわりに、上下水道、消防、都市交通などの広域行政にかかわる負担を避けることができることになります。

 しかしながら、本区は自他ともに認める都心区であり、周辺区とは全く異なる行政需要を抱えていると言えます。例えば、東日本大震災を受けての帰宅困難者対策の強化などは、区民、在勤者はもちろん、観光や移動中の方までその対象者に考える必要がありますが、それらが算定基準にどこまで反映されるかは大いに疑問があります。

 また、基準財政需要額の算定方式は毎年改正されていますが、この算定にのっとった施策をどの区も導入しており、本来の自主性を保つ趣旨とは異なり、実質的に使途を定めたひもつき補助金同然となる懸念もあります。

 さらに、法人住民税を主たる財源とする特別区財政調整交付金は景気の影響を受けやすく、現に本区の普通交付金は平成二十年に百三十五億九千万円であったが、二十三年度は百八億二千八百万円、今年度九十一億一千二百万円と、明らかな減少傾向にあります。現在、橋下大阪市長を中心に大阪都構想が大きく論じられておりますが、大都市制度のあり方とともに、都区財政調整制度による財源配分は都と区にとって課題が多い制度であります。本区としては、さらなる歳出の見直しや歳入の確保に努め、単なるサービスの削減ではなく、創意工夫による費用対効果の上昇と、より優先度の高い政策に財源を振り向ける選択と集中を進め、適切な自治体経営を行っていくことが、さらに重要となっています。

 以上の観点から質問をいたします。

 本区の都区財政調整制度並びに現状の基準財政需要額・基準財政収入額の算定額、交付金についての現状に対する見解と今後の見通しをどのようにお考えになっているのかお知らせ願いたいと思います。

 近年、企業で用いられる経営手法を行政に導入する例は、挙げれば切りがありません。今回は、その中でファシリティマネジメントについてお尋ねします。

 ファシリティマネジメントとは、JFMA(ジャフマ)、日本ファシリティマネジメント協会の定義によれば、ファシリティマネジメントとは社会の変化と新しい企業環境に対応して、経営的視点に立って建築等の施設類を有効・適切に計画・整備・運営・管理し、ダイナミックな企業活動の展開に貢献する全体的な取り組みとされており、行政の見地からは、国土交通省の定義として、官庁施設のファシリティマネジメントとは官庁施設のストック全体としての質が最適となるよう、既存の施設を有効活用しつつ、複数の官庁施設を群としてとらえた施設計画の策定等により、総合的に企画・管理し、整備・活用する手法とされています。具体的には、例えば区有施設の維持管理業務実態調査を実施し、清掃業務等委託について、仕様・積算基準の標準化等による適正化を試行したり、施設情報の一元管理システムを導入することなどが考えられます。

 区内の建築物を建てかえが必要な建築物、コンバージョンや大規模なリニューアルを行うべき建築物、社会的要請にこたえて良質なストックとして、その性能の向上を図るべき建築物、または不要となる建築物、余剰床を活用する必要がある建築物等に分類し、その上で所有、利用形態にかかわらず費用対効果やリスクを把握し、施設整備計画を策定するというのがファシリティマネジメントの基本的な考え方です。これまでの単なる施設管理の概念から脱却し、区有不動産、土地、建物、構築物、設備、これらすべてを、公共経営にとって最適なコスト最小、効果最大で保有し、運営し、維持するための総合的な管理体制を構築すべきではないでしょうか。

 そこで、お尋ねいたします。

 今まで申し上げたことを実現するために、中央区のファシリティマネジメント基本計画を策定し、全庁的な取り組みを図るべきであると考えますが、区の現状と今後の取り組みの方向性について御見解をお知らせください。

 次に、本区の交通計画全般についてお伺いいたします。

 まず、中央区総合交通計画の個別内容についてです。

 地下鉄をはじめとする公共交通の充実は、本区の誇るべき点であります。早くから地下鉄が敷設された本区内は、駅のバリアフリー化や動線確保に向けた取り組みが部分的におくれている箇所が散見されます。

 区内のある地下鉄駅では、地上と改札階を結ぶエレベーターに一度では乗り切れず、順番待ちをする光景をしばしば目にいたします。本来、地下鉄のエレベーターは、交通弱者となる高齢者やハンディキャップのある方を主な対象に設置されているわけですが、先ほど申し上げたエレベーターの近くには地下鉄の出入り口がないため、現実的には動線の問題で一般の方も多く乗るのが実情であろうと思います。単に、設置できるところから設置するという観点から脱し、エレベーターやエスカレーターの設置に際しては、深度の深い駅や利便性の高い経路から優先的な設置を目指し、エレベーターに関しては改札出口と設置位置とのバランスをとる必要があります。これまでの各駅一つ以上という設置目標だけではなく、必要があれば二つ以上や、一般の方を対象としたものも検討すべきであると考えられます。また、エスカレーターに関しても、片方向のみの設置が多く、上下双方向の運行を目指す必要が今後高まることが予想されます。

 バリアフリー化や交通弱者に向けた対策をこれまで以上に力を入れて行うことは当然ながら、利便性や安全性をも考慮に入れた整備の必要があると考えます。もちろん、これらは区独自でできることではなく、鉄道事業者や近隣の協力が不可欠であり、時間も費用も大きくかかることは当然です。

 その上で、お尋ねいたします。

 本区内の駅のバリアフリー化の現状と、鉄道事業者への働きかけや支援・助成の体制はどのようになっているのかお知らせください。

 次に、自転車駐輪場対策についてお伺いいたします。

 近年、本区や近隣都心区に新たに来られた新住民の方は、三十代から四十代の方が多く、その大半の方は職住近接を求めて越されてきています。職場も都心周辺にあるため、電車や徒歩はもちろん、自転車による通勤・通学も自然なライフスタイルであり、その需要は環境や健康への好影響も後押しして、今後もふえ続けることが予想されます。そのため、本区の各駅前、とりわけ東京駅八重洲口周辺の放置自転車は年々悪化傾向にあります。これまでも建てかえや再開発事業に際して駐輪場の整備等はなされてきていますが、需要には全く追いついていないのが現状です。

 そこで、お伺いいたします。

 再開発事業や鉄道事業者への働きかけのみに頼ることなく、機械式地下駐車場・駐輪場をはじめとする独自の放置自転車対策を講じるべき時期と考えますが、いかがお考えでしょうか。御見解をお知らせください。

 次に、車や自転車のシェアリングの導入推進についてお伺いいたします。

 昨年度の第三回定例会の一般質問において、私は自動車を中心としたシェアリング事業の普及・促進を図るべきであると申し上げましたが、今般の総合交通計画の中でカーシェアリングやサイクルシェアリングの導入推進がうたわれており、高く評価するところです。公共交通の発達している本区内で、各御家庭や個人がおのおの自家用車や自転車を持つことは、経済面のみならず、環境や、さきに述べた放置自転車対策への意義も大きく、みんなでシェアすれば、お財布にも環境にも優しい手段と言えます。

 そこで、今後の導入推進に当たって質問をいたします。

 現在のシェアリング事業の区内での普及状況について、調査や具体的な導入推進策は講じられているのか否かをお知らせください。

 次に、都並びに国の交通政策との連携についてお伺いいたします。

 近年、本区も直接・間接にかかわる交通体系の見直しが、都や国、交通事業者等で検討されています。例えば、浅草線短絡新線構想について、運輸政策審議会答申第十八号で、当初は日本橋・東銀座の両駅から分岐線を新設し、東京駅八重洲口の地下に東京駅を設置する構想でありましたが、現在は東京駅丸の内仲通り地下に東京駅を設置する案が有力とされていること、同じく運輸政策審議会答申第十八号において、当初、新交通ゆりかもめは勝どきまで延伸する計画案が盛り込まれておりましたが、実質的に凍結されていること、首都高速の再生に関する有識者会議において、江戸橋・汐留区間を地下に移設したりルート変更をして高架化すること、さらには、あいた土地を民間売却し再整備をすることを踏まえているとされていること、首都高速の晴海線延伸においても、首都高速は工事の着工を近く予定しているが、まちづくり協議会等でも必ずしも区民や地域から歓迎されていないということ、これらのことは、都や国をはじめとする交通関係団体が主体となって行っている事業でありますが、地元の基礎自治体として住民生活や区の将来に多大な影響がある中央区内での計画であります。本区は、これらの区内の主要な交通計画についてどのような見解を持ち、意見や要望を都や国、関係団体に具体的にどのように伝えてきたのか、また、これから伝えていくつもりなのか、その御見解と展望についてお知らせください。

 次に、産業・観光振興策についてお伺いいたします。

 まず、情報発信のあり方とブランド推進についてです。

 私が東京都内に住む知人と話していて、いつもよく言われることは、「中央区ってどのあたりだっけ」、「豊洲って中央区だよね」という話です。これは特別に地理に不案内の方ではなく、他区に住む一般的な方がよくおっしゃることです。具体的地名で日本橋、銀座、築地、月島などと言えば、皆納得してくれるわけでありますが、確かに中央駅はないわけですし、主な地域が日本橋、京橋、月島と三地域あり、その中に全国的にも有名な地名が点在しているとなれば、やむを得ない点もあるわけですけれども、産業・観光振興の観点から言えば、デメリットも多いと想像されます。すなわち、点と点がつながらない、まち全体としてのイメージがわきにくいということです。これは、ビジネスシーンであっても、観光であっても、本区を積極的に選択する理由が乏しくなる可能性があります。

 このような観点から、中央区の各地域間のつながりやブランド発信力を高めるための施策が必要であり、その具体策を区が主導で行っていくべきだと考えます。具体的な実践例として、区、商工観光関連団体による中央区ブランド推進連絡協議会を設置し、中央区ブランド並びに本区域内の地域ブランドを向上させ、区としての魅力発信を官民一体となって行う必要があると考えますが、いかがでしょうか。御見解をお知らせください。

 また、現在の区及び区内を紹介するパンフレット等は、作成している部署や目的により多岐にわたりますが、利用者にとってわかりにくい面があります。これらを整理・統合し、情報発信力を高め、利用者の利便性向上並びに作成経費の縮減を目指すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 さらに、来街者が多い都心の特性を踏まえ、区の案内表示について、①案内表示の必要性があるのか、②だれにでもわかるのか、③統一性や合理性は図られているのか、④景観に合っているか等を検証し、案内表示の更新をする必要があると考えますが、御見解をお知らせください。

 また、その際は設置条件を考慮し、デジタルサイネージ等の新媒体による案内表示についても積極的に検証し、導入すべきだと思いますので、その点についてもお考えをお願いいたします。

 次に、中小企業・商店街活性化対策についてお伺いいたします。

 近年、中小企業・商店街に活力を得るための一方策として、その組織や活動をマーケティングの観点から再構築することが提起されています。マーケティングを展開していくためには、その商圏や顧客の属性などを正確に把握する必要があり、それに基づいて事業構想や計画を策定していくことになります。これらは一定規模以上の企業では日常的に行われておりますが、個別の中小企業や零細商店が取り組むには困難な手法であります。

 そこで、お尋ねいたします。

 区の支援による企業活性化対策として、マーケティングを取り入れた活性化対策を行う必要があると考えますが、区の現状と御見解をお知らせください。

 さらに、現在、多くの中小企業や零細商店は、その経営環境とともに後継者不足や財政難による事業承継について大きな問題を抱えています。そこで、本区内の中小零細企業の実態と事業承継について区独自の調査を行い、具体的な支援制度を創設する必要があると思いますが、御見解をお知らせください。

 最後に、観光振興ビジョンについてお伺いいたします。

 歴史・文化を中心としたテーマ型観光・散策のニーズが高まっています。江戸期以来の歴史や文明開化の地として、多くの発祥地を持つ本区の特性が生かし切れていないのではないかと危惧しております。

 先日、私は町会の旅行で大阪に出かけてまいりましたが、大阪城公園には大阪観光ボランティア協会の看板が複数あり、スタッフが土日を中心に常駐していて、当日であってもスタッフにあきがあれば、すぐに大阪城について案内をしていただけ、含蓄のあるお話と地元の方との楽しいコミュニケーションがとれ、大変よい経験となりました。中央区におきましても、同様にボランティアガイドの育成や支援を行っておりますが、即日即時に対応してもらうことは難しいと聞いております。

 NHKの人気番組「ブラタモリ」では、本区内の幾つもの地域や地点がパーソナリティーのタモリ氏の独自の視点とゲスト専門家で紹介され、大きな反響がありました。本区職員のアテンドで区内の一部が紹介されたこともあり、マスコミの力もさることながら、日常の何気ない風景をどのような視点でとらえて、また専門家や地域の人間がどのように紹介していくかは、まち歩きや散策の大変重要なポイントであることに気づいた方も多いと思います。

 以上の観点から質問をいたします。

 マスコミとの積極的な連携も視野に入れた歴史・文化のまち歩きに関する情報提供をさらに積極的に行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。また、まち歩きボランティアガイドへの支援策や体制を強化・推進し、さらに気軽に利用できるまち歩きツアーなどを積極展開すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 また、その際に、観光やまち歩きに関しての施策やパンフレット等が、さきにも述べましたが、多岐にわたり、発信力が分散傾向にあるのではないかと考えます。現在の観光案内パンフレットの内容やホームページ等での発信等を総合的に点検し、場合によってテーマを絞り込んだ質の高い情報発信・観光行政を行うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 以上で一回目の質問を終了いたします。ありがとうございます。

〔区長 矢田美英君登壇〕

○区長(矢田美英君)
 田中耕太郎議員の御質問に順次お答えいたします。

 初めに、中長期の財政計画についてであります。

 区政の持続的発展を図る上で、中長期的な視野で財政運営の見通しを立てていくことは、極めて重要であると認識しております。こうした観点から、現行の基本計画二○○八では、平成二十年度から二十九年度までの十年間について、各年度の経常経費に計画事業や主な施設改修等を加えた総事業費を積算するとともに、特別区税等の収入や基金からの繰り入れ、特別区債の活用などによる財源の見込みを立て、計画推進の裏づけとなる財政収支の想定を明らかにしたところであります。現在策定を進めている新たな基本計画におきましても、今後の社会経済状況や税財政制度をめぐる動向などを慎重に見きわめながら、中長期的な財政収支の見込みを精査しているところでございまして、これからの十カ年に向けて着実に計画の推進が図られるよう、引き続き健全かつ弾力性のある持続可能な財政運営に努めてまいります。

 次に、都区財政調整についてであります。

 都区財政調整は、各特別区における一般財源の均衡化を図るため、客観的なルールにのっとり、標準的な事業に要する経費に地域特性を一部加味して算定されるものでございまして、毎年度、都区双方の提案に基づく協議を重ねながら内容の見直し・改善が行われております。長引く不況の影響により、交付金の原資となる法人住民税が低迷する中、近年の算定においては、基準財政需要額が全体的に抑制される状況が続いている上に、都心区の地域特性がいまだ十分に反映されたものとなっておりません。これに加えまして、本区においては、人口の増加等に伴い、特別区税が他区に比べて堅調に推移していることから、基準財政収入額は増加の傾向にあります。こうした要因が相まって、需要額と収入額の差である普通交付金の本年度当初算定額は、前年度に比べ九億四千万円余の大幅な減となったところであります。今後の見通しにつきましては、法人住民税の早期回復が期待できないなど、当面厳しい状況が続くものと予想されますが、財政調整交付金は本区の歳入の大きな柱であります。今後とも多くの事業所や昼間人口等を擁する都心の財政需要が一層反映されるよう、引き続き特別区長会を通じた協議の中で積極的な働きかけを行ってまいります。

 次に、ファシリティマネジメントについてであります。

 区が保有する建物や用地などを効果的・効率的に維持管理し、将来を見据えて計画的に整備・活用していくことは、区民ニーズに対応するサービスを安定的に供給していく上で極めて重要であると考えております。こうした観点から、本区は公共施設のあり方を検証・検討するための基礎資料として、行政サービスを提供する各種施設の整備状況や区有施設の築年数等の現況、建設費、維持管理経費の推移、民間活力の導入状況などの情報をファシリティマネジメントの意識を持って一元的に取りまとめ、施設白書として公表しているところであります。また、施設の改築や新設に際しては、周辺施設の再編・複合化や既存施設の今後の活用などについて庁内横断的に多面的な検討を行うとともに、サービス向上や効率性の観点から、民間活力の導入も含めた最適な管理運営手法を選択することとしております。今後とも、限られた財源の中で区民サービスを持続的に提供していくために、施設の計画的な整備・活用や効果的・効率的な管理運営に向けた取り組みを全庁を挙げて推進してまいります。

 次に、鉄道駅のバリアフリー化についてであります。

 駅のバリアフリー化は、高齢者や障害者から子供まで、だれもが安心して利用できる環境を整備する上で重要な課題であります。区は、これまで鉄道事業者への働きかけや公園等の用地提供、さらには駅に隣接する再開発に対して整備を求めるなどして、区内二十八駅のうち二十一駅にエレベーター等が設置されており、現在も八丁堀駅でエレベーターの設置工事が行われているほか、勝どき駅の改良工事においても、出口の新設にあわせてエスカレーターの設置が予定されております。鉄道駅のエレベーター等の設置は、鉄道事業者の責務として、一駅に一台以上の設置を目標に進められているところであります。エレベーターの複数化や上下双方向のエスカレーターの設置については、望ましいものと認識しておりますが、鉄道事業者からは、スペースの確保等が課題であると聞いております。なお、駅のバリアフリー化に対する整備費助成については、東京メトロ及び都営地下鉄には国・東京都が、JRには国・東京都及び区が助成する制度を設け、対応しております。

 次に、放置自転車対策についてであります。

 本区は、これまで道路、公園や地下鉄駅上部の空間などを活用し、区内十六の駅周辺に十九カ所の駐輪場を設置しております。また、銀座三越やコレド室町を含む室町東などの開発においても、開発事業者を指導し、駐輪場の整備促進に努めております。しかしながら、現在、東京駅前や銀座、日本橋の商業エリアなどにおいて放置自転車が多く見られることから、その対策が急務であります。区といたしましては、今後、地元の理解と協力のもとで、都や警察など関係機関との連携を図りながら、歩道上の駐輪場整備へ向けた場所の確保に加え、屋外自動車駐車場の駐輪場への用途転換や取り締まり強化等についても検討を進めるなど、放置自転車対策の充実を図ってまいります。

 次に、カーシェアリングやサイクルシェアリングの導入推進についてであります。

 自動車や自転車の共同利用は、交通量の削減や放置自転車対策として期待できるなど、交通環境の改善につながるものと認識しております。現在、区内では民間企業によるカーシェアリング事業やマンション居住者間のサイクルシェアリングが行われておりますが、これらの仕組みを本区で普及させるためには、利用者となる住民の理解のもとで、所有から共有への意識改革が必要なことから、中長期的に継続して取り組む課題と考えております。そこで、区では、放置自転車対策として有効な自転車の共同利用について検討を進めており、銀座地区をモデルに、地区内を走行する自転車の共同利用化について、地元協議を進めたところであります。また、区の市街地開発事業指導要綱によるマンションの駐輪場附置義務についても、共同利用を前提とした見直しを検討しております。今後は、区内の先行事例の実態調査やカーシェアリング、サイクルシェアリングを事業として行っている企業の説明を受けるなどして、民間活用も視野に、実現に向けた検討を進めてまいります。

 次に、都や国の交通政策との連携についてであります。

 現在、都営浅草線新線構想や首都高都心環状線の再整備など、本区にかかわりの深い計画が国等で検討されていることは承知しております。日本経済の中心である本区において、こうした計画により人や物の交流を支える交通インフラが整備・充実することは望ましいものと考えておりますが、整備沿線地域の事情や影響に対しては配慮が必要であります。そこで、こうした計画が地域に理解され、良好な計画となるよう、これまでも区として情報収集に努め、まちづくり協議会等を通じまして地元意見を把握し、国や東京都に要望などを行っております。例えば、日本橋上空の首都高速道路の移転問題では、日本橋再生推進協議会などで検討し、国に地元案を提案するなどの取り組みをしてまいりました。今後は、これら計画が都市計画として検討が進められることを踏まえ、法に基づく意見提出など、さまざまな機会をとらえながら国や都に地域の意見を適切に伝えるなど、良好な地域づくりに寄与する計画となるよう、地域と一体となって取り組んでまいります。

 次に、産業・観光の振興策についてであります。

 まず、本区の魅力の発信についてであります。

 本区は、世界の繁華街、銀座をはじめ、食文化の拠点、築地、江戸繁栄の象徴、日本橋、下町情緒の人形町、水辺豊かな月島・晴海など、どの地域も集客力の高い個性豊かなまちであります。こうした各地域の個性が集積し、互いに相乗することで、さらに中央区としてのポテンシャルが高まっていくものと考えております。また、本年三月に策定した観光振興ビジョンでは、娯楽や商業、サービスなど区内の産業すべてを観光資源ととらえる都市観光を推進していくことにいたしました。今後、官民を超えてさまざまな人々が集い、都市観光の視点から幅広く観光振興を協議する場として都市観光推進協議会を設置いたしますので、こうした場を活用して遊・職・住三拍子そろった本区の魅力に磨きをかけ、発信してまいりたいと存じます。

 次に、区を紹介するパンフレット等についてであります。

 現在、区では、本区の魅力を網羅した観光ガイドマップのほか、本区の豊富な文化財を地図とともに掲載した「文化財めぐり」、区の施策や地域の歴史などを紹介した「区勢要覧」など、利用目的に応じて工夫を凝らしたパンフレット類や冊子を作成し、活用いただいているところであります。今後とも利用者の視点に立って、わかりやすく使いやすい情報を効果的・効率的に提供できるよう努めてまいる所存であります。また、区の案内表示の整備に当たっては、利便性や効果、経費などを十分に考慮しているところであります。例えば、観光案内については、四カ国語表記と絵文字を用いた案内板を駅の出入り口など来街者が利用しやすい場所に設置しております。デジタルサイネージについては、総合スポーツセンターにおいて検証を進めており、今後その結果を踏まえ、増設について検討を進めてまいりたいと存じます。今後とも、国や都などと連携を図りながら、統一性や景観にも配慮した、わかりやすい案内表示の整備に努めてまいります。

 次に、中小企業と商店街の活性化についてであります。

 本区のにぎわいを支える中小企業や商店街が、社会状況の変化に応じて活発に事業活動を続けていくためには、顧客ニーズの的確な把握と分析、知恵と工夫を生かした商品・事業の開発、最も有利な販路の選択などが重要であります。区内では、活力ある商店街づくりを目指し、築地や人形町、東日本橋、月島などの商店街が自発的に活性化のビジョンを作成しております。その際、専門家に依頼して消費者の志向、セールやイベントの効果、各個店における売れ筋状況などについて調査・分析を行い、その結果、来街者や売り上げの増加に大きな効果を上げているところであります。区では、ビジョン作成に要する経費の一部を助成するとともに、中小企業が販路の拡大と商品に対する評価の収集のため、展示会に出展する際の費用について補助を行うなど、中小企業等の販売力向上に向けた取り組みを支援しているところであります。

 次に、中小企業の事業継承に対する支援についてであります。

 地域に根差した特色ある産業を将来に引き継ぎ、発展させていくことは、活力ある地域づくりにとって大変重要であると認識しております。このため、区では、経営相談の中で経営状況や後継者、資金繰りなど、その実態を詳細に把握するとともに、個々の事業者に応じた経営ノウハウや技術の継承などについて助言を行っております。また、経営セミナーや経済講演会の際に事業継承セミナーを開催し、継承に向けた計画の作成と知識の習得を図っているところであります。今後とも、こうした取り組みなどを通じて商店街や中小企業への支援に力を注いでまいります。

 次に、観光振興についてであります。

 区では、歴史や文化、産業などのテーマ別まち歩きに加え、今年度新たに舟運を活用したコースを取り入れるなど、本区の魅力を存分に堪能できるさまざまなまち歩きのツアーを実施しております。こうしたまち歩きでは、本区の歴史・文化に造詣の深い文化財サポーターがガイド役を務め、趣のある語り口、細やかな心遣いなどが好評を得ているところであります。今後は、文化財サポーターのほか、多くの方にガイドとなっていただけるよう、観光振興ビジョンに掲げる観光の担い手の認定制度の創設や担い手同士のネットワーク化などにより、案内ガイドの育成を図ってまいります。さらに、食べ物やファッションなど新たなテーマによるツアーの開発にも取り組んでまいります。

 次に、観光の情報発信についてであります。

 本区は、各地域がそれぞれ多彩な魅力を有し、個性を発揮しているところから、観光客のさまざまなニーズに合わせて多様な観光資源を紹介するため、区内を特色ある五つの地域に分け、詳細な解説を加えた「エリア別ガイドマップ」をはじめ、商店街を観光の視点からまとめた「ふれあい街歩きマップ」、本区発祥の文化を紹介した「はじめて物語マップ」などを発行しております。また、観光協会のホームページでは、区内で催される祭りや文化事業などの各種イベントのほか、観光協会特派員ブログや耳寄り情報など、盛りだくさんの内容を発信しております。こうしたパンフレットやホームページについては、観光客はもとより、地元商店街や区民から、わかりやすく使いやすい、区の豊富な観光情報をタイムリーに知ることができたなど、好評を得ているところであります。今後は、民間事業者や商店街、区民活動団体などの情報を収集・整理し、初めて本区を訪れる人から、繰り返し来街されている方までが楽しめるよう、幅広い観光情報をマスコミ等さまざまな媒体を活用して発信し、本区の魅力に一段と磨きをかけてまいります。

 答弁は以上であります。

〔十七番 田中耕太郎議員登壇〕

○十七番(田中耕太郎議員)
 それぞれありがとうございました。

 何点か確認と再質問をさせていただきたいと思います。

 財政計画を中期的にというお話をさせていただきました。これは、基本計画の中にもう既に盛り込まれているという御回答だったかと思うんですけれども、やはり独自のというか、もう少しだけ目的別の明細なものをつくってもよいのではないかというふうに考えてございます。これは、先ほどのファシリティマネジメントですとか、ほかの部分とも当然連動して、関連して考えていかなければいけない問題でございますし、当然、予定どおりにすべてが動くというわけではないわけですけれども、だからこそ、十年スパンの中期計画といったものの重みというのはあるんだと。その場その場で対応していくという考え方と同時に、軸となる十年計画、それも財政的な面での強い十年計画といったものが必要ではないかという観点から質問をさせていただきました。

 都区財調について、御答弁の中でもあったんですけれども、都心の地域特性といったものが、やはり十二分に反映されていないのではないかと。我々が都心区として主張すべき点が、区長会等で主張していただいているというお話ではありますけれども、もう一段階上の何か要望ですとか地域特性を伝えるいい手段といったものがないのかということをお知らせしていただきたいというふうに思ってございます。

 駐輪場についてでございますけれども、順次対応しているという御答弁だと思うんですけれども、やはり人口の増加、サイクリング、自転車のブームで駐輪場は、大きな駅前、とりわけJRの駅前では全く間に合っていないというのが実感でございます。これも一朝一夕にできる問題ではないんですけれども、もう少し根本的な問題解決の方法といったものを考えていく必要性があるのではないかというふうに思っております。

 あわせて、シェアリング事業に関してでございますけれども、これも民間事業者ですとか利用者の理解を得ていくという御答弁でございましたけれども、今現在、中央区は人口が増加してございまして、新築等の、賃貸も含めて分譲マンションがどんどんつくられている。新しくつくられたときに、カーシェアリングやサイクルシェアリングというのは導入していかないと、後からやろうと思ったら、これは非常に厳しいんです。私もマンションの管理組合で理事長等をやらせていただいておりますけれども、最初から入っていれば、皆さん利用するんですけれども、今、自分の自転車が既にある中で、あえてどなたかをどかして、そこに共有の自転車を置くというのは、やはり現実的には厳しいというのが実感でございます。ですから、新築物件を中心に、管理組合との対応も含めて、車や自転車を共有していく、そういったまちづくりというのは、本区であれば非常に可能性が高い事業だと思いますので、ぜひとも積極的に取り組んでいただきたいというふうに考えてございます。

 観光とブランドのところで、ちょっとブランドのところは説明が不十分なところもありましたけれども、観光という面もあるんですけれども、中央区の特産品等を一つのブランド、中央区ブランドのようなものをつくっていくというお考えがないかどうかをもう一度お伺いしていきたいと思います。

 まちとしても、中央区という一つのブランドをつくる必要性もあると思いますし、飲食店なんかもそうですし、中央区の名産品と言われるようなものもあると思いますけれども、そういったものをまとめていくような発想といったものが必要ではないかというふうに思いますので、その点についての御見解を再度お知らせしていただきたいと思います。

 以上の点、よろしくお願いいたします。

〔区長 矢田美英君登壇〕

○区長(矢田美英君)
 どうも、どうも。

 都区財調、都心のニーズ等々が反映されていないのではないか、そうなんですね。常に、私たちと周辺区とは区長会でも対立するんですよね。周辺区は周辺区で、自分たちのところは人口が随分多いんだと。世田谷区さんなんかは八十万、足立区さんだって七十万、大勢住民がいる。中央区は都心区、都心区と言ったって少ないじゃないかというようなことで対立する。しかし、こちらはこちらで、住民だけではなくて事業所の皆様方等々の育成等々もやっているんだということで、これは区長会だけの問題ではなくて、例えば地方制度調査会ですら、そういう議論があるんですよ。先般開かれた地方制度調査会の中でも、ある区とある区を比べると人口ではもう十倍以上の差があるじゃないかというような点ですね。そういう点は地方制度調査会にもある。これはまた、今急に起こってきた問題ではない。もう何年というか、何十年ですね。戦後ずっとと言っていいぐらい、都心区と周辺区との議論については、特別区制度が始まって以来、行われている。だから、これを私たちはもっともっと言っていかなければいけない。

 それはそうでしょう。だって、財政を支えているのは、この都心区なんですよ。例えば、中央区だけでも国税の四・三%ですか、それをこんなちっぽけなと言いながらも、私たちがしっかりといろいろな道路をつくったり整備して、だからこそ、国税の四・三%、都税だと一一%ですか、中央区だけでそれだけ賄っている。こうしたものを誇りとして、今後とも言うべきことは言っていかなければならない、そういうふうに思っているところでございましてね。いろいろ、副区長会等もありますし、あるいは部長会等もありますから、いろいろな点でやっていかなければならない、こういうふうに思っているところであります。

 それから、ファシリティマネジメントですか。だから、そういうものの意識を持って、今やっている施設白書なんかはそういう心を持って発表しているところであるわけでございます。ただ、もう少し丁寧にということですか。そういった点はこれから工夫をしてまいりたい、こういうふうに思いますね。

 それから、放置自転車問題、あるいはカーシェアリングやサイクルシェアリング、これはもう開発のときにやったほうがいいんじゃないですかというようなこと、それは先ほど、だから、言っているじゃないですか。市街地開発事業指導要綱によるマンションをつくろう、そういったときにちゃんと附置義務、これをつくっていこうではないかということ、またカーシェアリングやサイクルシェアリングについても、同じようなことでやっていこうではないか、こういうことであります。

 どうも田中さん、中央区がデメリットが多いとかブランド発信力がないだとか悲観的な、魅力に乏しいとかいうようなことばっかり言われるけれども、そんなことはないんだよね。区長会なんかで皆さんに聞くと、「中央区ほどすばらしいところはないな」、こう言われるんですよね。「そんなことはないよ」と謙遜するんですけれども、それでも、やっぱり「二十三区の中で一番いいのは中央区だな」と、こう言われるぐらい、中央区というのは物すごいパワーと魅力にあふれているわけでありますから、どうかそういう自信と誇りを持っていただきたいな、議員としてもね。

 だから、稲盛さんだって楽観的にやれと言うんですか、楽観的に。そのとおりですよ。自分たちのまちはだめだ、だめだと思っていると、だんだん沈んじゃうんだよね。もっと誇りを持って、我がまちほどすばらしいものはないんだと。ブランド発信力もすばらしいんだと。わずか十平方キロで台東区さんと同じように一番小さなまちだけれども、ここが財政でも何でも国を支え、二十三区をちょっと見ても、何か中央区というのはへそがないというようなことを言われましたけれども、ほかの区と比べてみなさいよ。では、ここの区はこれが中心なんだとか、そういうのは少ないですよ。中央区こそ、いろいろなダイヤモンドが散りばめているように、銀座だ、日本橋だ、築地だ、佃だ、もうすごいでしょう。勝どきだ、あるいは兜町だとか人形町だとか、もうダイヤモンドがぎっしり入っている。

 そういうまちなんだから、そういうのを誇りを持って、何か名産品はないかなんて言っていたけれども、名産品なんて私が言うほどじゃないでしょう。自分で考えれば、たくさんあるでしょう。自分自身でいろいろと考えて行動する、これが重要ではないかな、こういうふうに思うわけであります。

 以上であります。

〔十七番 田中耕太郎議員登壇〕

○十七番(田中耕太郎議員)
 大変熱のこもった御答弁ありがとうございます。

 私が申し上げたいのは、決して中央区が、もちろん悲観的な気持ちで申し上げているわけではなくて、非常に高い潜在能力があるので、さらにこの潜在能力を生かしていきたいというのが、いろいろな問題の質問の趣旨でございます。ですから、決して悲観的に考えていることは全くなくて、区長のおっしゃるとおり、区長にまさるとも劣らない気持ちで中央区のすばらしさを自負しているところであります。

 その上で、ただ、余りにも逆に一つ一つが分散してしまうのではないかと。一個一個がすばらしいがゆえにですね。ある程度核となるものをつくっていくというのも大事なことではないかという趣旨で、観光ですとか産業振興については申し上げてございます。

 それから、カーシェアリングとサイクルシェアリングのところと駐車場のところ、これはちょっと分けて考えなくてはいけなくて、サイクルシェアリングやカーシェアリングは、私が申し上げているのは、主に新築のマンション等での導入を目指すサイクルシェアリングないしカーシェアリングですから、こういったものは新しい建物、マンション等が建ったときに導入していく必要性がある。これに対して、駐輪場は今までのあり方だと、東京駅前を中心に整備が間に合わないのではないか。ですから、そういった建てかえの時期を待つことなく、先ほど一部駐車場を転用するというような御回答もありましたけれども、そういう新しい方策も考えていくべきではないかという趣旨で考えてございますので、その点、分けて御理解していただければ幸いでございます。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。(拍手)

○議長(石田英朗議員)
 次に、八番河井志帆議員。

八番 河井志帆議員登壇

○八番(河井志帆議員)
 中央区議会みんなの党の河井志帆でございます。私は、今定例会に当たり、会派の一員として、区政の直面する課題につきまして、通告書に従い、当事者の視点から区長及び関係理事者に対し質問をさせていただきます。どうか建設的かつわかりやすい、具体的で前向きな御答弁をお願いいたします。御答弁のいかんによりましては、再質問をさせていただきます。

 今回、短い持ち時間ではございますが、ひとり親家庭に対する支援にテーマを絞りまして質問をいたします。

 今月七日に厚生労働省から、平成二十三年度全国母子世帯等調査の結果報告が公表されました。これは、全国の母子世帯・父子世帯・養育者世帯の生活の実態を把握し、福祉対策の充実を図るための基礎資料を得る目的で五年に一回行われている調査で、平成二十三年十一月一日時点のデータをもとにしたものです。なお、震災の影響で、岩手、宮城、福島の三県は除かれた数値となっています。

 さまざまな調査項目がある中に、ひとり親になった事情というものがあり、その回答は大きく三つに分かれます。一つ目は離婚によるもの、二つ目は死別によるもの、そして三つ目はその他です。その他には何が含まれるのかといいますと、未婚のまま親になったケース、そして親になったものの相手が行方不明になったケース、そして子供が遺棄されたケースなどです。

 全国の調査結果では、母子家庭になった理由として、離婚によるものが全体の八○・八%となっています。一方で、死別によるものは七・五%、その他の理由が一一・七%となっています。また、平均年間就労収入に関する調査では、離婚した母子世帯は百七十六万円、死別した母子世帯が二百五十六万円なのに対し、未婚の母子世帯は百六十万円です。また、離婚した父子世帯は三百四十七万円、死別した父子世帯は四百四十四万円、未婚の父子世帯は二百二十五万円となっており、母子・父子ともに未婚世帯の経済的基盤の脆弱性及び困窮度の高さがうかがえます。

 さて、中央区ではどのような割合となっているかを全国のデータと比較してみます。昨年三月に発行されました中央区ひとり親家庭実態調査報告書、これは次世代育成支援行動計画の見直しのために必要な資料を得ることを目的にした調査で、平成二十二年七月二日から三十日が調査期間となっています。全国調査とは時期や、また調査対象が厳密に一致しておりませんが、データとして活用をさせていただきます。

 中央区でひとり親になった事情に対する回答は、離婚によるものが六九・一%、一方で死別によるものが五・七%、その他の理由が二五・二%となっています。厚生労働省の全国調査と比べて、離婚を理由とする人の割合は一一ポイント以上低く、その他を理由とする人の割合は全国の二倍以上です。特に、十代のひとり親の八割、そして二十代のひとり親の三割以上が未婚やパートナーの消息不明などを理由とするその他をひとり親になった事情として挙げているのが特徴です。

 そこで、お尋ねいたします。

 中央区内のひとり親家庭、特に未婚のひとり親家庭について、その実態をどのように把握しておられますか。実数など具体的数字もわかれば、お知らせください。

 死別や離婚でひとり親になった世帯と、未婚など、その他の理由でひとり親になった世帯で大きな差がある点が一つあります。それは、寡婦(夫)控除です。寡婦(夫)控除には、女性か男性かの違いにより寡婦控除と寡夫控除があります。

 寡婦(夫)控除とは、死別や離婚によってひとり親になった人が受けられる控除で、控除される額は所得税で二十七万円、また条件によっては三十五万円、住民税で二十六万円、条件によっては三十万円です。適用される条件として、寡婦控除は夫と死別もしくは離婚してから結婚をしていない人または夫の生死が不明の人で、生計を一にする子供がいる人、または夫と死別してから結婚していない人または夫の生死が不明な人で合計所得金額が五百万円以下の人とされています。一方、寡夫控除は、合計所得金額が五百万円以下であり、かつ妻と死別または離婚した後、結婚していない人で、さらに生計を一にする親族である子供がいる人ということが要件となっています。

 この寡婦(夫)控除は、未婚でひとり親になった世帯では受けられません。生活実態として、同じひとり親家庭という厳しい状況にありながら、離婚や死別と未婚で、これだけの税制上の差がつけられている現実は、差別以外の何物でもありません。

 そもそもこの寡婦控除という制度自体は、第二次世界大戦により、家計の柱である夫を失った戦争未亡人が家に残された扶養親族、子供を抱えながら所得を得るためには、通常の場合に比べて、さまざまな追加的費用を要することを考慮し、その救済のために、昭和二十六年にできた制度であります。しかしながら、死別母子世帯も減少し続け、その歴史的使命は終わったと言ってもよく、むしろ税の基本原則である公平性に、さきの観点から、反しているとも考えられます。

 この寡婦控除を未婚のひとり親世帯にも適用されたとみなして、自治体の裁量で決めることができる保育料や公営住宅の利用料を算定する動きが全国的に広がってきています。

 一九九七年に導入した岡山市では、非婚でも離婚や死別でも、母子家庭という状況は同じという考え方から、所得税法上では寡婦と見なされないシングルマザーを対象に、所得控除が適用されたとみなして課税額を算定し、保育料を減額する母子家庭の支援策を行っています。

 千葉市でも、未婚の母が寡婦控除に含まれないのは不利益な扱いだという市長の考えから、寡婦控除をみなし適用し、保育料または子どもルームの利用料を軽減しています。市長が二○○九年六月に就任し、その年の十一月に導入を発表、翌二○一○年四月に実施というスピード感です。

 沖縄県内でも、十八の市町村が公立認可保育所の保育料を減免する寡婦控除のみなし適用を既に導入もしくは導入を検討しているということです。

 保育料の減免については、その他にも沼津市、四日市市、そして高知市、松山市、高松市、また札幌市や朝霞市でも同様の制度を導入しています。

 そこで、お尋ねをいたします。

 離婚や死別以外の理由でひとり親になった方の割合が、全国と比べ高いこの中央区でも、この寡婦控除のみなし適用を保育料や公営住宅の利用料の算定に導入すべきだと考えますが、いかがでしょうか。区長の御見解をお知らせください。

 なお、今回の御提案は、あくまで制度上の不公平に対してメスを入れるものであり、そもそもの寡婦控除という制度自体を現状に見合った制度に改編するか廃止するか、この議論は国レベルで行われるべきものだと考えております。

 全国千七百五十自治体をさまざまな面でリードする立場におられる区長におかれましては、最初にお願い申し上げましたとおり、具体的かつ前向きな御答弁をいただけるものと期待して、私の一回目の質問を終わります。

〔区長 矢田美英君登壇〕

○区長(矢田美英君)
 河井志帆議員の御質問にお答えいたします。

 初めに、中央区内のひとり親家庭の現状認識についてであります。

 本年九月一日現在、ひとり親家庭のうち、経済的支援が必要とされている児童扶養手当の受給対象世帯は五百九十世帯、そのうち所得が少ないことから全額支給されている世帯は二百九十六世帯となっております。なお、未婚のひとり親世帯の数や種別については、申請時において確認はしておりますが、その後の集計を行っておりません。

 次に、寡婦控除のみなし適用についてであります。

 未婚のひとり親は、税法上、寡婦控除の対象とならないことから、離婚・死別によりひとり親となった世帯と同じ所得額でも税額を基準に算定している保育料などにおいて負担が大きくなる場合もあります。現行の保育料の算定方法は、その家庭における扶養数による影響などを反映しやすい反面、税制改正の影響を受けやすいことから、寡婦控除の適用を含め、より適切な保育料及びひとり親住宅の使用料となるよう算定方法を検討してまいります。

 答弁は以上であります。

〔八番 河井志帆議員登壇〕

○八番(河井志帆議員)
 御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 今月上旬に衆参で全会一致で可決され、十四日に公布されました母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法、これは、子育てと就業の両立が困難であるなど、母子家庭の母及び父子家庭の父が置かれている特別の事情にかんがみ、母子家庭及び父子家庭の福祉を図るため、ひとり親の就業の支援に関する特別の措置を講じようとするものであり、十の項目からなっています。

 その中で、地方公共団体は、就業の促進を図るため、必要な施策を講じるよう努めるとされています。しかし、就業、自立を最優先課題にした現在のひとり親世帯の支援政策に欠けているのは、ひとり親の経済的自立の土台となる家庭生活の安定や子の成長、発達など総合的な生活自立の視点であるとも考えられます。特に、未婚のひとり親にとっては、社会の風当たりも強く、婚姻の形や母子世帯になった理由によって手当の支給がコントロールされるなど公的にも差別され、孤立しやすい状況にあります。経済的にも精神的にも困窮しているひとり親の実態について、把握している状況を御答弁いただきましたけれども、特別措置法で自治体の責務とされたひとり親の就業の促進を図るための施策、これを講ずるためには正確な実態把握が必要だと考えます。

 また、ひとり親の実態把握は、子供の虐待予防、早期発見につながる可能性もあります。そのような理由によって、ひとり親家庭のより正確な実態把握をこの場では要望をさせていただきます。

 また、寡婦控除のみなし適用についてですけれども、算定方法を検討するというお話をいただきまして、ありがとうございました。

 具体的に、何を検討されるのかということをお伺いしたいと思います。例えば、該当人数や費用の算定にどのくらいの時間がかかり、そこから実施の可否を判断するのにどれくらい時間がかかるのか、このあたりについて具体的にお示しいただきたいと思います。

 また、もし可否について検討した結果、やらないということが判断された場合には、それは未婚の母に対する、ある意味、ペナルティーであるという判断を区が下したと区民に理解されることになりますが、それでよろしいのか、その点を確認させていただきたいと思います。お答えによっては、再々質問でもう一歩踏み込んだ問いかけをさせていただくかもしれませんので、よろしくお願いいたします。

 私は、今回、ここに制度上の不公平があって、それを基礎自治体の判断で解消することができる部分があるということを申し上げているのでありまして、ほかの自治体での例も挙げさせていただきました。再度お考えをお知らせいただきますようお願いいたします。

〔福祉保健部長 平林治樹君登壇〕

○福祉保健部長(平林治樹君)
 今回のひとり親家庭に対する寡婦控除の見直しについてお答えをさせていただきます。

 現在の保育料自体は、先ほど区長が答弁したように、税制改正の影響を一つは受けやすい。これは、今後の税の改正動向を見ますと、復興増税ですとか、そういった影響もすぐ出てくるということが考えられます。

 ただ、現在の税方式というのは、その確定の状況というのをあらわすには、それは一つのやり方として大変有意義であるというふうに考えておりまして、税方式から、例えば所得方式に直した場合に、今言ったようなみなし法の適用、これはある意味影響がなくなるということで、税方式なのか所得方式なのか、さらに、所得方式をとったときに、これはまたどういう影響があるのかという部分、これを具体的に一つ一つ検証しながら、影響を考え、それで行っていきたい。つまり、実施時期的に申しますと、やはり今後の国の税制改正の動向を見ながら、それまでには回答を出していきたいというスパンで考えております。

 答弁は以上でございます。

〔八番 河井志帆議員登壇〕

○八番(河井志帆議員)
 前向きな御答弁をいただきましたことを本当に感謝申し上げたいと思います。

 太宰治の作品に「家庭の幸福」という作品があります。

 町役場の戸籍係に勤める男性が、帰宅時間になって片づけをしているところ、ひどく見すぼらしい身なりの女性が出産届を持って、彼の窓口にあらわれました。「お願いします」と言う女性に対し、係の男性は「だめですよ、きょうはもう。時計をごらん、時計を」と言って出産届を窓口の外に押し返します。「きょうでなければ、あたし、困るんです」と女性が再度訴えたときに、その係の男性はもうそこにはいませんでした。その晩、その女性は玉川上水に身を投げるというお話です。

 ひとり親世帯の親は、子供は本来両親の愛情を受け、両親に見守られながら育っていくべきものであるという認識を持っているため、あるべき家庭を子供に提供できなかったという自責の念から、他人に相談せずに自分で何とかしなければと考えてしまいます。自分にも子供にも厳しく向かい合う結果、悲しい事件につながることもあります。気軽に相談できる環境づくりと言いますが、相談するということ自体、今の自己責任社会において最後のとりでだ、自分ではもうどうしようもなくなってしまったときのSOSだと考えている方も少なくないと思います。

 子育てが孤独感を助長する子育てにならないように、皆様とともに必死に考えてまいりたいと誓いまして質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)


○二十三番(増渕一孝議員)
 議事進行について動議を提出いたします。

 ただいま一般質問の半ばではありますが、この際、暫時休憩されるようお諮り願います。

〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 ただいま提出されました動議は賛成者がありますので、成立いたしました。よって、直ちにこれを議題といたします。

 お諮りいたします。ただいまの動議に御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 御異議なしと認めます。よって、暫時休憩いたします。

午後三時二十二分 休憩


午後三時四十分 開議

○議長(石田英朗議員)
 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 一般質問を続けます。十八番渡部恵子議員。

十八番 渡部恵子議員登壇

○十八番(渡部恵子議員)
 議長から発言許可をいただきました民主党区民クラブの渡部恵子です。平成二十四年第三回区議会定例会に当たり、民主党区民クラブの一員として、区の一般事務及び区政の当面する課題につきまして、区長並びに関係理事者の方々に質問通告書に沿って発言させていただきます。区民の皆様の暮らしの安心・安全、社会福祉の向上を図るために、建設的かつ即効性のある御答弁をお願い申し上げます。なお、再質問はこのまま留保させていただきます。

 本年八月二十九日、内閣府の有識者検討会は、駿河湾から日向灘の南海トラフを震源とするマグニチュード九・一の最大級の地震が起きた場合、最大三十二万三千人が死亡し、二百三十八万六千棟が全壊・焼失するとの被害想定を発表しました。東京も、冬の午後六時、風速八メートルで地震が起きた場合の想定では二千四百棟全壊し、液状化被害も相当数に上るとされています。

 東京湾に入る津波は、東日本大震災では晴海で一・五メートルを記録しましたが、台風や大雨の浸水と違い、津波は横から押し寄せるエネルギーが強いため、身動きがとれなくなり、内閣府が陸地に応じた津波の高さによる死亡率を分析したところ、浸水七十センチで七一・一%、一メートルで一○○%死亡すると発表しています。幼い子供は体が小さい分、浸水が三十センチ程度でも危険ということも、あわせて伝えられました。

 一方、国土地理院の調査によれば、東日本大震災発生後、わずか二分以内に東日本が東側に最大五メートル引っ張られたことによって、その断層の最南端に位置する関東沖でも、最大五十センチ東側に引っ張られた状態になりました。年間八センチずつ陸側のプレートの下に太平洋プレートが沈み込み、現在も断層の最南端に位置する関東沿岸部の太平洋沖合では、陸側のプレートは東側に少しずつずれ込み、その下に太平洋プレートが沈み込む構造になっているため、ひずみがたまり続け、このため、震災後、小さな群発地震が関東に多発していると、京都大学防災研究所の遠田准教授は指摘しています。

 中でも、関東で特に地震活動が活発化している地域は三地域あり、その一つが東京の地殻で発生していることが、東京大学の地震研究所の平田教授の研究によって明らかになりました。

 平田教授は、一万三千台の地震計を設置していますが、現在、首都東京の地下に設置している高精度の震度計によれば、東日本大震災以降、無数の地震活動が南下し、東京の複雑な地下活動に及ぼしている影響は、東日本大震災以前の百三十倍に増加していると伝えています。

 震源は、東京の下にある三つのプレートの境で起きていることがわかりました。一番下は東側から沈み込む太平洋プレートであり、その上に南から沈み込むフィリピン海プレートが重なり、一番上には陸側のプレートが乗っている構造になっています。陸側のプレートは東側に引きずられているため、フィリピン海プレートの間にわずかなひずみができ上がります。こうして東、南と交互に沈み込む力によって、各プレート境界に働くバランスが、東日本大震災によって大きく変化してしまったことが、調査によってわかりました。

 浅いプレートで地震が発生すれば、地面の揺れが激しくなりますが、この調査の結果、浅いプレートで複数の地震が発生している箇所が三カ所見つかりました。そのエリアとは、太平洋東部沖、茨城県南部、そして東京湾北部です。東京湾北部地震は、過去、幕末の江戸を襲いました。安政の江戸を襲ったこの地震では、七千人が火災と家の倒壊によって死亡したという記録が残されています。さらに、最も浅い陸側のプレートは活断層であることがわかりました。その一つが立川断層です。

 二○一一年、国の地震調査委員会は、立川断層に新たな危険があることを発表しています。東京大学地震研究所の佐藤教授の調査によれば、立川断層の東側に三つの非常に大きな地殻変動を経験した跡があり、その一つは池袋を抜け、新宿に到達している断層があると、調査の結果を発表しています。

 このほか、首都大学東京などの共同研究チームの調査によって、田端から飯田橋を通り、四谷まで伸びる長さ七キロの断層が見つかり、さらに上野から銀座に伸びる断層と、汐留付近から築地を通り、上野に伸びる断層、飯田橋、市ヶ谷、九段、勝どき、月島の七つの断層の存在を現在まで見出していると、調査結果が明らかにされました。

 ただし、これが活断層かどうかの調査においては、より詳細な調査を要するが、実際は、これらの都心は自然の地形が開発で失われているために、難しいこともつけ加えられています。

 地殻変動分析を専門とする元前橋工科大学の教授によれば、「千四百五十万年前の日本海拡大の終了とともに、日本列島はくの字型に曲がり、そのときできたのが日本列島を横断する柏崎千葉構造線で、その後、太平洋プレートの潜り込みにより、現在の位置まで戻って、複雑な断層系ができた。立川断層はその一部であり、東京直下に多くの断層ができているのは間違いないが、全容を把握するには堆積層が厚く困難であると、危険性を把握しながら、複数の断層が活断層かどうかの調査ができないことを指摘しています。

 このように、昨年の三月十一日に大きな地殻変動が起きた結果、ことしに入ってマグニチュード五以上の地震は、既に関東地方で二十回以上を記録し、ほかの地域においても、福島県吾妻山で、今まで活動していなかった場所に新たな噴火口が発生し、秋田県駒ヶ岳の斜面の温度も上昇しているなど、各地で火山で地熱が高いエリアが広がり、火山活動に影響が出ていると、気象庁で調査に入っています。

 台風の災害を記録してから、台風被害で亡くなった人は現在まで百六十三名ということですが、二○○四年の新潟水害では、この数を一度で上回る被害者を出しました。阪神・淡路大震災以降、こうした自然災害による被害が多発しており、日本はもはや災害の多発期に入ったと言う専門家もいます。

 地震、台風といったハザードに社会的脆弱性が重なり合ったところに災害は発生します。自然が引き起こすハザードには、人知が及ぶ範囲ではないために、手を尽くすことはできませんが、社会的脆弱性の強化を施すことによって、被害は減災できます。ゆえに、東日本大震災が及ぼした地殻の大きな変動によって、大変革期が訪れていることをしっかりと認識し、中央区行政といたしましても、目に見えないが、しかし、一たん暴れれば大きな影響を及ぼす地震、またその他災害に対する本区の社会的脆弱性の強化という取り組みを講じていく必要性があります。

 そこで、お尋ねいたします。

 東京都は、本年九月十二日、首都直下型地震対策を柱とする地域防災計画の素案を公表しましたが、建物の耐震化など減災対策の徹底及び家屋の不燃化、自主防災組織の活動によって、それぞれ達成目標を二○一五年、二○二○年に向けて打ち出しています。本区は、一部木密した住宅が並ぶ地域があり、大地震によって住宅が倒壊した場合は、阪神・淡路大震災のときのように火災が発生する蓋然性が高くなります。こうした地域に対する住宅耐震化及び火災が発生したときの延焼防止に対して、区の対策を伺います。

 また、免震対策を施していないビル、マンションについて、倒壊防止のための耐震化施策をどのように講じていくのかも、あわせてお聞かせください。

 激しい液状化、また火災発生のために緊急車両が通行できない場合の火災対策についてお伺いいたします。

 仮に、本区の地震活動が大きく、激しい液状化が発生した場合、緊急車両が通行できない可能性もあります。住宅密集地では、一度火災が発生すると、火の粉が飛ぶことで新たな火災が発生していくことが実験によってわかっており、住民が消火活動を行うには限界があると消防庁でも発表しているところですが、液状化によって消火栓が被害を受けた場合、また激しい火災によって住宅密集地に緊急車両が通行できなくなった場合の火災延焼防止及び救命救急活動に対する対策をどのように講じていくのか、お考えを伺います。

 本年九月二日の防災訓練では、本区は災害時要支援者に参加していただく防災訓練を行いましたが、マンション内に居住している高齢者のための訓練であり、避難時はエレベーターを使用したものでした。

 東日本大震災で一人の犠牲者も出さなかった岩手県大船渡市の高齢者福祉施設の施設長のお話によれば、常日ごろから津波を想定した避難訓練を実際に行っていたこと、また三月十一日の二日前に起きた大きな地震の際も、避難場所まで避難したが、このときに認知症の高齢者は自分が大切にしているものへの執着が強いことから、いざという時に備え、玄関に一人一人の利用者の愛用品を用意しておいたという話でした。

 三月九日の大きな地震の際、トイレに入った高齢者が三十分出てこなかったため、迅速な避難ができなかったことを踏まえ、もしさらに大きな地震が来たら、だれがトイレのドアを外し、トイレに入った高齢者を担いで避難を行うか、担当を取り決めたという話でした。三月十一日直後、いざ避難をしようとしたところ、九日にトイレに立てこもった高齢者と同一人物が、またもやトイレに立てこもったため、話し合っていたようにトイレのドアを外し、担ぎ上げてバスに乗せ、大急ぎで高台へ避難したそうです。そのおかげをもち、施設は津波で流されましたが、だれ一人利用者が被害を受けることはなかったということでした。

 本年三月七日に行われた、日野消防署が災害活動相互応援協定を締結した企業、地域、消防団と二百五十名の利用者がいる東京光の家の避難訓練を見に行きました。視覚障害者や複合的な障害がある方が多く利用している東京光の家の訓練は、実際に即したものでした。

 高齢化によって車いすで避難せざるを得ない人への避難訓練も行われ、歩ける障害者たちは、それぞれが数名ずつ、肩に手を置いて、地域のボランティアの人の声かけによって、避難所まで徒歩で参集していました。その際、けがを負った人も想定し、どのような傷病なのかをゼッケンにつけた障害者の方々を現場でトリアージする様子を見ました。避難所まで参集し、安否確認や迅速なトリアージによる傷病手当の様子は、まさしく実際に即したものであり、こうした経験から見えてくる問題や課題を今後の避難誘導に生かす訓練がなされていました。また、支援する側にとっても、一人一人障害の程度が異なる方にどのように接し、声をかければいいのか、車いすでの避難の仕方ということを実地に体験することができるため、いざという時には訓練していたことを生かした対応をとることができます。

 何が生死を分けたか。被災地で実際に日ごろの訓練が生きた結果、だれ一人として犠牲者を出さなかった施設があるように、実際に即したこうした避難訓練は、次の減災対策につながり、自然災害であるハザードは避けられなくても、社会的脆弱性の中で取り残され、真っ先に犠牲になってしまうであろう、こうした社会的弱者と言われる方々の生命・財産の安全を図るには、大変有効な手段と考えます。

 既に、区議会定例会で災害時要支援者に対する実践的な訓練を行うという御答弁をいただいてはおりますが、今月二日の防災訓練は形式的であり、実践的訓練は行われませんでした。前述いたしましたように、東京の地殻活動は、私たちが見えないところで着々とひずみがたまり、どのような被害がもたらされるかは、実際に起きてみなければわかりません。しかし、そうであるならば、今後在宅療養を余儀なくされている災害時要支援者に対しても、実践的な避難訓練を行う必要はあると考えます。

 平成二十三年十月より、株式会社富士通総研による岩手県、宮城県、福島県下の自治体、市町村社会福祉協議会、特養等高齢者施設、地域包括支援センターなどのすべてに対しアンケート調査を実施した結果が、本年五月十七日に出ました。これによれば、在宅の高齢者も長引く被災生活によって要介護高齢者になる可能性もあり、最も課題となるのは、在宅高齢者の避難体制の確保と、実態把握に伴う早期対応による悪化防止を指摘しています。

 アンケート調査によれば、地域在宅高齢者の安否確認や心身状態の確認支援を行ったかという質問を地域包括センターなどに行った結果は、宮城県、岩手県、福島県三県全体の回答は、「行った」が五三・一%、「近隣の高齢者を把握していなかった」という回答が四三・四%、「全く地域の在宅高齢者の確認を行わなかった」回答は二・七%ということで、およそ半数が地域の在宅高齢者を把握していなかったという検証結果となりました。

 在宅高齢者の実態把握は、自治体や各事業者が個別で行っていた状況があり、これによって高齢者を見落とすリスクが高くなるだけでなく、必要なサービスに迅速につなぐことの難しさも生まれたとされています。また、環境の変化によって、在宅高齢者も要介護のボーダーライン周辺にいると考えられているため、災害発生後のステージでは、早期に在宅の高齢者の状況把握を行い、情報の一元化を行うことが生存と症状悪化の防止につながっていくとされています。そのためには、災害直後、まず安全な場所への確実な避難が重要視されます。あらかじめ対象区域を定めた上で、当該区域における要援護者の安否確認と、本区への状況報告を行う外部事業者を委託し、その事業者が行うべき内容の設定と、事業者がそれらを進める上で必要とされる要支援者などの情報提供と、そのルールを定めておく必要性があります。

 実際の事例では、津波によって事業所が流出し、職員が離れ離れになりながらも、災害当日から、地域の高齢者の安否確認に入った地域包括支援センターの存在が挙げられています。当該地域包括支援センターは、地元の自治体が受託しており、災害時の連携体制として、地域自治会などと日ごろから訓練を重ねて、連携体制ができていたこと、また、要援護高齢者などについても把握が進んでいたことによって、災害時に事業者が自動的に動く体制と、その動機づけが構築されていました。その結果、災害直後から事業者が行動できたことで、迅速な安否確認と状況把握が可能になりました。こうした実際に即した訓練からあぶり出される課題は、社会的脆弱性の強化につながり、より多くの高齢者、また障害者の方々の生命・財産の安全を図る施策となり得、より区民の福祉に資する政策と考えます。

 そこで、再度お伺いいたします。

 今後、在宅を余儀なくされている高齢者の方々、障害者の方々に対する実践に即した避難訓練を行うこと及び総合防災訓練に在宅療養者、障害者施設、高齢者施設の入居者も参加することについて、区の姿勢をお伺いいたします。

 三月十一日では、被害が大きく、行政自体が津波で流された地域もあって、災害時には行政は一%も機能せず、実際は○・七五%しか機能できなかったと、同志社大学社会学部の立木茂雄教授は指摘しています。公助は、大規模災害時、一%も機能できなかった事実に対し、本区ではどのようにお考えでしょうか。一%にも満たない機能を補完するには、何が必要とお考えでしょうか。

 それには、自助・共助という近所の方々の日ごろの連携や、想定できる事前の対策も有効な手段と考えますが、この点について区のお考えをお示しください。また、共助を行う環境整備のためには、地域力を強化することが重要と考えますが、このための施策は何ができるのか、区のお考えをお伺いします。

 仙台の障害者NPO団体の話によれば、脳性麻痺で車いすでの生活を余儀なくされている女性が避難所へ赴いた際、避難所は次々と避難してくる住民でごった返していたため、結局、家に戻らざるを得なかったというお話を伺いました。トイレについても、災害時ポータブルトイレは、重度の障害者にとっては使用できないこと、また車いすに座ることもつらい脳性麻痺の患者にとっては、体に緊張が走るために横になれるスペースも必要だが、車いすを回転させるには四畳ほどのスペースを要し、その上、横になるスペースを欲する状況では、避難してくる人たちに多大な迷惑がかかるということを察し、家に戻ることにしたというお話でした。

 仙台では、福祉避難所を一施設を設け、二百四十名収容可能だったにもかかわらず、なぜこのようなことが起きたのかというと、障害者施設と行政の間で情報の共有化が行われていなかったことに起因するということでした。また、当事者を入れた災害対策の仕組みを一緒に考えてこなかったことが何より大きな原因となったと、さきの立木教授は指摘しています。

 本区の障害者の方々に伺ったところによると、障害者の保護者が区の担当者を招いて個別に防災対策について尋ねることはあっても、行政から積極的に障害者の方々に対して防災会議の出席、あるいは意見を尋ねられる機会は、現在まで行われていないとのことです。これでは、社会的な脆弱性の中に取り残されてしまう、こうした弱者の方が被害を真っ先に受ける可能性は極めて高くなります。実際、ハザードと社会的脆弱性の中で、大きな被害を受けた地域で亡くなった方の中に、幼い子供、高齢者、障害者という弱者が真っ先に犠牲になったことを踏まえるならば、当事者を入れた防災対策を講じる必要性は急務です。

 そこで、お伺いいたします。

 今後、障害者の代表を含めた防災会議の委員としての参加を検討すること、また、障害がある方々の視点をどれだけ防災対策に取り入れ、ともに対策を構築していくのか、区の今後の対応についてお聞かせください。

 さきの脳性麻痺の女性も、また南相馬市で高濃度放射線量の中を自宅で避難せざるを得ない重度の障害がある方々の支援を行っている障害者のNPO団体の施設長も、「日ごろから、障害者は自分の障害について、行政や災害時要支援名簿に積極的に伝える義務がある」というお話でした。その理由は、南相馬市でも仙台市でも、災害時要支援者名簿はあっても、氏名と住所と障害が書かれているだけで、避難に当たってはどのような支援が必要か、また被災生活では何が必要なのかということについては書かれていなかったため、名簿が生かし切れなかったというお話でした。また、地域とつながっていない高齢者、障害者、在宅で避難生活を行うこうした方々へ、震災後、どのような支援ができるのかが課題だったという行政側のお話も伺いました。

 本区も、有事に備え、障害者の方々へ積極的なアプローチをかけていたとしても、障害を隠したいという方の御意向が壁となり、その先の支援が難しい環境にあるというお話も聞き及びます。しかしながら、実際、大きな災害が発生したときは、どうしても自助では避難が難しいのが現実です。

 そこで、被災地の障害者の方々の声を踏まえるならば、障害者の方々は自分の障害の詳細や、避難に当たってはどのような支援が必要なのかを区行政に対し、災害時要支援名簿に記載する協力を惜しまず積極的に行わなければ、公助も共助も難しく、救済はしてもらえないと考えます。

 一般の避難所で精神障害の方や発達障害児を抱える父兄が、薬がなくて困った、また環境になじめずに困ったというお話もあります。長引く被災生活で症状が悪化していく中で、ひたすら避難所での共同生活に耐え続けることがどれほど困難なのかを被災地の障害者の方々が証明してくださっています。そうであるならば、本区の障害者の方々も、天はみずから助ける者を助けると言われるように、自助のためにも、あらかじめ行政へどのような支援が必要かを伝える責務があると考えます。本区は、区民の生命を預かる責務を負うことを考え、あえて救助を必要とする障害者の方々へ、実際に即した話をする必要があると考えますが、この点につき、今後の区の対応をお尋ねいたします。

 東日本大震災では、個人情報の保護に関する法律が壁となり、救済に駆けつけた障害者自立生活支援センターやNPO法人が、障害者の救済に当たりたくても情報が開示されず、対応ができなかったというお話がありました。宮城県東松山市、福島県南相馬市が限定的に個人情報保護法の例外規定を活用しましたが、それにはこうしたNPO団体が行政に何度も足を運んだ結果として、限定的に例外として一部の情報が開示されました。これほど大きな災害だったにもかかわらず、多くの地方自治体で個人情報保護を遵守する姿勢が保たれたままでした。

 中央区個人情報の保護に関する条例第十四条において、外部提供の制限を規定しています。第十四条は、「実施機関は、保有個人情報の区の機関以外のものへの提供をしてはならない。ただし、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められる場合を除き、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない」とし、同条第四項に「人の生命、身体又は財産の安全を守るため、緊急かつやむを得ないと認められるとき」は、この限りでないと規定しています。すなわち、緊急かつやむを得ないと認められるときは、人の生命、身体、財産の安全を守るために外部機関に個人情報を提供することが規定された条例でありますが、本区では当該第十四条第四項をどの段階で発令、適用するのでしょうか。

 甚大な被害が起きたとき、他の機関に対し、本区の区民の生命、身体、財産の安全を守るために救助の要請を行わなければならないときも想定しておかなければなりません。本区が緊急かつやむを得ないと認めるときは、どのような被害に至ったときに適用するか、適用される基準を今から取り決めておく必要があると考えます。また、この条例の適用除外を行う機関の取り決めも行う必要があると考えます。区の適用基準と、適用除外を許可するに適した機関はどこに定めるのかについて、区のお考えをお知らせください。

 東日本大震災で被害を受けた四つの介護福祉施設が、職員の被災によって十分な介護を受けられなかった問題を受け、岩手県で災害派遣介護チーム(DCAT)の創設に向けた取り組みが進んでいます。

 災害派遣介護チームは、社会福祉士、介護福祉士、看護師、理学療法士などの介護スタッフがチームとなり、災害発生より三十六時間以内に被災地へ赴き、被災地の福祉施設や避難所などで介護を行う組織で、災害派遣医療チーム(DMAT)の福祉版と言える存在です。チームメンバーは、被災地のニーズに合わせて交代しながら、中長期にわたっての介護活動に当たることになっています。

 現時点では、DCATはオーストラリアで活動が見られる程度で、しっかりと制度体制が整っていませんが、既に石川県では活動が行われ、東日本大震災時に要請を受けました。厚生労働省は、平成二十四年四月二十日付で介護職員等の応援派遣体制(災害派遣介護チーム)に関する整備を促す通達を全国に出しているものの、いまだに制度化されるまでには至っていません。しかし、現在、北海道の北海道災害派遣ケアチームのように既に名乗りを上げ、積極的に複数の福祉施設法人と協定を締結する団体も出ています。

 大規模災害発生後、避難所は混乱のきわみと言えます。東日本大震災後も高齢者が口腔ケアを施さないことが原因で誤嚥性肺炎を発症するなど、外傷疾患より内科系疾患が長期化し、災害派遣医療チームが機能しないケースが多発しました。医師の力よりも、むしろ発災後三十六時間以内に駆けつけてくれるソーシャルワーカー、介護福祉士、看護師などで構成される介護の専門家集団の力こそ、長引く被災生活の中で大きな力になってくれるものと思われます。水や物資が不足している震災直後から介護、看護の体制を整えることができれば、被災生活の中で高齢者が心身の調子を一度崩すと長引いてしまう疾患も、発達障害や精神障害で周囲と適切な関係が保てないようなケースであっても、専門家によって適切な処置をとることができると考えます。

 そこで、あらかじめ既にDCATを構成している自治体と連携を結び、本区が災害で長引く避難生活を余儀なくされたときの対応を講じる必要があると考えますが、区のお考えをお伺いいたします。

 先日、三日間にわたり、東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市から南三陸、田浦、名足、追川、気仙沼の海岸線を視察し、名足の吉野沢仮設住宅、石巻市万石浦仮設住宅、蟹田仮設住宅、女川針浜仮設住宅を訪問し、仮設住宅にお住まいの方々のお話を直接伺う機会をいただきました。

 災害後一年半たった今、防災無線で迫りくる津波の中を最後まで避難を呼びかけ続けた方が亡くなった、あの南三陸町の浜は、今でも家の土台だけを残し、落ちた鉄道の橋もそのままで、流された車が山のわきに積み上げられているほかは、全く時間の経過がとまったかのように何も変わっていない現実が横たわっていました。もっとも、ひどい地盤沈下のために、海が満潮時に陸地に上がるようになってしまったために、土地をかさ上げする工事も施さなければならないのは理解ができますが、海岸線を走る県道も学校も、壊れたまま手つかずになっていました。

 仮設住宅にお住まいの方々というのは、もともと持ち家が流された方であり、もとの場所に帰りたくても地盤沈下によって帰宅は許可ができない状態が続いています。仮設住宅は、ひとり暮らしの方ならば四畳半一部屋、二人暮らしならば四畳半が二部屋という環境の中でお住まいでした。仮設住宅を担当する厚生労働省によると、快適過ぎる仮設住宅は自立を阻むという意味で、あえて住みにくい環境をつくっているという話を耳にしましたが、津波で財産を一度に失い、家族も失い、穏やかに過ごしていたはずの日常生活も失った人へ、幾ら自立させるためといえども、快適な環境を与えられないという考え方には疑問を呈したいところです。

 仮設住宅というのは、もともと住んでいたまちの方とともに同じ仮設住宅に入居できるのではなく、建築し終えた仮設住宅に高齢者から順に入居させたために、隣近所の顔を知らない高齢者たちが共同生活を行うことを余儀なくされたため、長きにわたってあいさつを交わすことが難しかったというお話を伺いました。仮設住宅の理事会長の対応次第によって、コミュニティができ上がるケースもあれば、面倒なことは背負い込みたくないからといって、名ばかりの理事会長がいる仮設住宅では、住民同士のコミュニティができ上がらず、孤独や引きこもりが発生しているということも耳にいたしました。実際、私が訪れる一週間前、石巻市の大型仮設住宅にお住まいのひとり暮らしの四十二歳の男性が自殺なさったという話も耳にしました。

 仮設住宅にお住まいの方々が口々にお話しなさることは、「遅々として進まない環境の中でひたすら我慢に我慢を重ねている」ということと、見回りと称して社会福祉協議会の方が訪れたとしても、通り一遍のおざなりな見方をするために、留守宅にハエが無数にたかっているのに、高齢者の安否を確認せずに仮設住宅を後にするというような見落としも多く、「行政に何度申し立てても現状は全く変わらない。いつ、何をどうしてくれるのかという方向性すら見せてくれない。私たちは市営住宅を建ててほしいと言っているのではなく、もともと家を持っていたのだから、もとの場所に帰れるような施策をとってもらいたいし、それができないならば、かわりとなる場所の確保をしてもらえば、皆それぞれ家を建てることはできる。家を持つことが難しい高齢者の方だって、市営住宅に入りたいとは決して思っていない」と、どの仮設の方々も同じことをお話しされました。また、「仮設住宅の高齢化が始まり、漁業が復旧しない限り、出稼ぎに行った若い人もまちに戻れず、まち全体の復旧が停滞し、心の安寧を得られずに精神的に病んでいく人たちが多い」ということをおっしゃった方もいらっしゃいました。

 ひとえに、大規模災害のために行政が回らないため、社会的な脆弱性の中に落とされ、また、その中で取り残されている人たちが、まさしく被災地の市民の方々だということを痛切に教えられました。

 震災後も、引き続き地域の脆弱性の中に取り残されたままの人たちが大勢いるというのに、行政から適宜情報提供や適切な対応がとられていないために、行政への不満が積もりに積もっている状況にあり、住民の怒りが頂点となっていました。そうしたことを教えられ、被災後の復旧対策は事前の防災対策とは異なる視点で構築せねばならないと被災地から学びました。

 都心における災害の程度がどの程度かは、実際起きてみなければわからないというのが正直なところだと思います。しかしながら、都心区だから、すぐに復旧できるという意見は、何の根拠もありません。実際、石巻市役所は、日和山公園に向かう丘の中腹にありましたが、目の前の消防署とともに使用できなくなり、駅前の移転を余儀なくされています。災害時の防災本部となる役所が被災し、指揮命令系統が出せない現状になってしまいました。

 都心にあっても、同じことが予測できるのではないでしょうか。都心区だから、物流さえ生きていれば復旧は早いなどと決して言えない現実があります。都心を襲う災害は、東京都全域、そして関東全域へと広がる蓋然性が高く、どのような被害状況になるかは、実際はだれにも予想できない状況下にあります。被害の大きさによって幹線道路が使用できる状態か否か、海路が使用できるかどうか、専門家は、こうなったらこうなるであろうという予見はできたとしても、実際に予測は不可能だからです。また、中央区だけでなく、東京都も、国をつかさどる官庁も東京に集中しているために、行政機関の指揮系統がどこまで働くかは、被害の大きさによって全く不透明な状況です。しかしながら、区民の生命、身体、財産の安全を預かる区行政といたしましては、想定し得る最悪の状態をシミュレーションしながら対応策を講じる必要性はあります。

 いわゆる企業が行うBCP、事業継続計画は、企業が災害や事故などの予期せぬ出来事の発生により、限られた経営資源で最低限度の事業活動を継続ないし目標復旧時間以内に事業再開できるようにするため、事前に策定する行動計画のことを言いますが、BCPの策定では、まずビジネスインパクト分析を行い、自社の業務やプロセスが抱えるリスクと損害の影響を洗い出します。その上で、優先的に復旧すべき事務と、それに必要な整備やシステムを明らかにし、目標復旧時間の設定や復旧手順を計画していくことによって、より包括的な事業継続管理を可能とすることができますが、そのためには定期的にBCPを見直す必要があります。

 内閣府の事業継続ガイドラインにおいて、事業継続計画は緊急時の経営や意思決定、管理などのマネジメントの手法の一つに位置づけられ、指揮命令系統の維持、情報の発信・共有、災害時の経営判断などの重要性など、危機管理や緊急対応の要素を含んでいるとされています。

 一般企業が一つの法人として災害後の事業の復旧のためのこうした事業計画の策定は、私たち地方行政にとっても同様に計画できるものと考えます。ビジネスインパクト分析を行政に当てはめるならば、本区が抱える社会的脆弱性などの分析に当たり、本区の業務や、抱えているリスクと損害の影響を分析することに当たるのではないでしょうか。その上で、優先的に復旧すべき事務、自分たちのとめてはいけない機能は何か、管理すべきものは何か、指揮命令系統を維持し、区民へ向けた情報発信・共有、災害時の刻々と変わる事態に対する判断は現場が責任を持って行うのか、迅速に事態に備えるには、どの部署のだれが担当するのかといった役割分担は決めているのかなど、事前に計画を策定することによって行政運営の安定した継続が図れるものと考えます。

 他方で、災害復旧とは、災害復興に関する事業のうち、特にインフラストラクチャーなどの復旧事業を指すとされていますが、狭義においては、地方公共団体が公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法に基づいて施行するもの、もしくは国が直轄事業として施行するものをいうと規定されています。

 現在、区が取り組んでいらっしゃるBCPにおきましては、各部署が優先的に復旧すべき事務、そして継続しなければならない機能を推進するために、だれが何を担当するのか、また指揮命令系統を発揮するには、だれが責任者として状況判断を行うのかなど、さまざま取り組んでいらっしゃると思いますが、区のBCP計画の現状をお知らせください。

 また、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法が補完する事業は、本区においてはどのような事業が該当しますか。

 なお、同負担法の対象とならない学校、病院などについては、どのように復旧計画を施していくのでしょうか。区の考えをお知らせください。

 二○○四年の新潟県中越地震では、自動車の中で避難生活を過ごしていた人の中に深部静脈血栓症、いわゆるエコノミー症候群で命を落とす人がいましたが、東日本大震災でもトイレの使用を避けるために、なるべく水分をとらずにいた高齢者が、深部静脈血栓症を発症してしまったケースがありました。内閣府の中央防災会議では、東京湾北部を震源とした地震が発生した場合、二時間後には都内で八十一万人強がトイレに行けない状況になると指摘しています。

 本区でも、災害時に備え、マンホールトイレの設置を行っていますが、下水道に直結したマンホールトイレを機能させるには、下水道機能が破損しないときに限って有効ということが問題になります。下水管が地震によって破損すると、たとえマンホールトイレであっても、汚物が詰まってしまい、そうなれば復旧作業がさらに難しくなるおそれがあります。さきの中越地震では、下水管の被害が約百五十キロ、マンホールの被害が約二千七百カ所、最大一万三千戸の下水道が使用できなくなりました。

 そこで、こうした事態に備え、マンホールトイレになりかわる対策を講じる必要があると考えますが、区ではどのような対策を講じられているかお伺いいたします。

 次に、エネルギー対策についてお伺いします。

 七月三十日に高速増殖炉もんじゅを視察してまいりました。もんじゅは、ナトリウム型冷却高速中性子型増殖炉であり、水と反応すると大爆発を引き起し、空気に触れても火を噴き、大火災を発生させるという化学活性が余りにも強いために、アメリカ、フランスでもまだナトリウム型冷却高速中性子増殖炉は建設されていません。

 一九九五年に、もんじゅはナトリウムが漏れ出したために空気に触れて火災を起こしたということは、記憶に新しいところです。福井県には十四基の原子力発電所がありますが、もんじゅの地下には破砕帯が存在し、地震による被害の心配も現地の人々にとって大きな問題となっていました。もんじゅに関しては、コストの問題も含め、さまざまな問題が横たわっています。

 他方で、世界じゅうの原子力発電所は、炉を冷却し続けなければならないために、大気中にも海水にも百度の熱を放出し続けています。世界じゅうの原子力発電所が大気に放出する熱量、そして海水に放出する熱量は、海水温を少なくとも七、八度は上昇させると、原子力庁の専門家に質問したところ、答えてくれました。川と海水の温度差が二度違えば、サケは生まれ故郷の川に戻ることはできません。魚にとっての一度は、人間にとっての十度に匹敵するからです。昨今、海が枯渇していると漁協関係者の間で叫ばれているのも、こうした人工的に放出される熱量が高いことも起因しているのではないかと、私自身、推察しているところです。

 デンマークにあるロラン島は、風力発電で一○○%電力を起こしています。地域温暖化対策とCO2削減のためには不可欠とされる低炭素社会の実現をデンマークは先駆けて行っています。ロラン島は、地元産業である造船業が衰退しているまちでしたが、新しいエネルギー施策実現のために、造船業に従事していた腕のいい作業員たちが風力発電所に再雇用され、まちが復興した事例として取り上げられている島です。

 先日、千葉大学の倉阪秀史教授の地域主導型のエネルギー革命についてお話を伺う機会を得ました。倉阪教授によれば、日本は自然エネルギーの宝庫であり、既に各行政が地の利を生かしたエネルギー施策をとり行っているとのことでした。本区は都心区なので、都心であってもできるエネルギー施策はあるのか尋ねてみたところ、「都心ならば太陽光エネルギーが最適と言える。ただし、マンションやビルでは難しく、幼稚園や学校の屋上、一軒家の屋上に設置するならば、十分効果が得られる」という回答をいただきました。

 再生可能エネルギーの世界的動向は、コスト面から風力が主流ですが、その次に、バイオマスのシェアが高くなっています。それに続くのが太陽光発電ですが、ドイツが世界四四%のシェアを誇り、日本はスペインに次ぐ第三位となっています。ただ、コストが高いので、どうしても先進国に限られるエネルギー施策でありますが、今後、太陽光エネルギーのシェア拡大が想定されるとともに、コストも抑えられていくとの話でした。

 二○一二年現在、生まれた子供たちは二一○○年に向かって生きていく人たちです。今生まれた子供たちが二一○○年を迎えるときに、より住みやすい地球環境であるためにも、今から施策を講じていく必要があると考えます。区長も、平成二十四年第一回区議会定例会に際し、未利用エネルギーの活用を利用した施策を推進すると、区長所信表明として方向性を打ち出されましたが、低炭素社会実現に向けた本区のエネルギー施策を今後具体的にどのように推進なさるのか、御見解をお聞かせください。

 以上をもちまして第一回の私の質問を終わります。

〔区長 矢田美英君登壇〕

○区長(矢田美英君)
 渡部恵子議員の御質問に順次お答えいたします。

 初めに、木造住宅の耐震化と延焼防止についてであります。

 地震による倒壊を防ぐための耐震化施策は、最優先に取り組む課題と認識しており、区では昨年七月に木造住宅やマンションなどにおいて助成制度の大幅な見直しを行ってまいりました。木造住宅については、耐震診断の無料化や助成額の引き上げを行った結果、昨年度は簡易耐震診断を含む耐震診断が二百七十二件、補強工事が四十五件と、一昨年から実績が倍増しており、今年度も引き続き増加傾向となっていることから、取り組みが進んでいると認識いたしております。また、延焼防止策についてでありますが、本区はほぼ全域が建てかえの際には耐火構造が求められる防火地域に指定されていることから、地区計画による個別の建てかえや共同化による不燃化を推進しているところであります。

 次に、ビル、マンションの耐震化についてでありますが、コスト面や居住者の合意形成などの課題があることから、マンション管理組合の総会などに積極的に出席し、合意形成を支援するとともに、助成制度の説明やコスト縮減につながる補強方法の紹介などの取り組みを進めております。今後とも、建築物の倒壊を防止する耐震化及び建築物の不燃化に全力で取り組んでまいりたいと思います。

 次に、火災延焼防止及び救命救急活動についてであります。

 大地震発生時には、同時に多発する火災、消火栓の支障や通行障害などにより消防機関の消火・救命活動に支障が生じることも想定しなければなりません。こうした場合には、住民が互いに助け合い、初期消火や救命活動に当たることが重要となります。このため、区では区民の方々に出火防止に関する啓発、地域防災フェアでの家庭用消火器の頒布や街頭消火器の設置に取り組むとともに、防災区民組織にD級ポンプ、応急救助資器材の配備に努めております。また、応急手当講習会の実施により、救命活動の普及を推進しております。こうした取り組みとあわせ、地域の防災リーダーである消防団とも連携して、共助体制の確立に努めてまいります。

 次に、在宅高齢者及び障害者の避難訓練についてであります。

 区では、ひとり暮らしの高齢者や障害のある方等、災害時要援護者に対する地域の支援体制を構築するため、二つの町会をモデル地区に設定し、マニュアルづくりに取り組んでおります。モデル地区では、ワークショップを開催し、その一環として、要援護者が参加する避難訓練を実施しました。各地区では、それぞれ実際に要援護者の方々を高層マンションの上層階から一階まで誘導する訓練と、自宅から訓練会場の公園まで車いすで移送する訓練を行いました。今回の訓練では、まずは安全面を考慮し、介助の余り必要のない方を対象といたしました。しかしながら、すべての要援護者を災害時に安全に避難させるためには、実践に即した訓練が必要であります。今後は、医療・介護事業者や消防署等から寝たきりなど重度の方を含めた避難の方法等について指導いただきながら、より実践的な訓練が展開できるよう準備を進めてまいります。また、総合防災訓練における在宅療養者や施設利用者の参加は、区民の方々に要援護者への支援の必要性を認識していただくためにも重要であります。今回のモデル地区での訓練結果を参考に、関係機関とも協議を進め、実施方法等について検討してまいります。

 次に、災害時の自助・共助の重要性についてであります。

 東日本大震災では、巨大津波による大きな被害の中で、行政機能の喪失が生じ、住民の生命、身体、財産を守る役割が果たせなかった事例は、本区にとっても教訓となりました。大災害に際し、行政機能を維持していくためには、庁舎の耐震化や業務継続計画を策定するなど、事前の備えをしておくことは不可欠なことであります。さらに、区民がみずからの命を守り、ともに助け合うこともますます重要となってまいります。こうしたことから、本区では東日本大震災を契機とした区民の防災意識の高まりを踏まえ、みずからを守り、近隣がともに助け合う仕組みづくりをさらに強化するため、高層住宅の防災マニュアルづくりを推進するとともに、防災区民組織、防災拠点運営委員会の訓練等を通じ、地域の防災力向上に取り組んでいるところであります。

 次に、障害者の防災対策への参画についてであります。

 区では、本年七月、災害時に自分の身を守ることや一人で避難することが難しい方々の安全確保を図るため、災害時要援護者支援体制マニュアル検討協議会を設置いたしました。この協議会では、障害者の代表も委員として参画いただき、災害時の支援体制づくりに取り組んでいるところであります。また、各障害者団体へは、御要望に応じて出前講座による本区の防災対策の説明を実施し、参加者からの意見や要望も直接伺っているところであります。障害者の代表を本区の防災会議の委員とすることは今後の課題でありますが、このようなさまざまな機会を通じて、障害者の方々の意見を地域防災計画の修正にも反映させているところであります。

 次に、災害事前対策のための障害者の責務についてであります。

 災害時に障害者が安全に避難生活を行うためには、障害者が必要とする支援と区ができる支援について、事前に認識を確認し合う必要があります。区では、これまで障害者団体との会合において、避難所に一人では行けない視覚障害者、環境が変わると症状が悪化する知的障害者など、障害者の具体的な状況を伺いながら意見交換をしてまいりました。また、聴覚障害者、内部障害者、精神障害者など、一見障害者とわからない方が災害時に周囲に支援を求めるには、その方が自分の情報を携帯している必要があります。今後、区では周囲に自己の障害への理解や支援を求めるための「ヘルプカード」を障害者団体と協議を行いながら作成し、支援が必要な障害者に配布していく予定であります。

 次に、災害時の個人情報提供についてであります。

 東日本大震災では、災害時の障害者等への支援について、NPO法人等の障害者支援団体が多様な活動を行う中、協力を申し出ても障害者の個人情報が開示されず、安否確認等が実施できない例もありました。緊急かつやむを得ない場合の個人情報の外部提供は、中央区個人情報の保護に関する条例により、制度上認められているものでございまして、大災害発生時に被災者支援を円滑に行うためには、発災後、早期にこの規定を活用していくことが重要であると存じます。しかしながら、この運用に当たっては、情報開示先として適切な団体であるかが課題となることから、今後、災害支援活動を実施している団体等と事前に協議し、基準を設けるなど、発災時に適切に対応できるよう検討してまいります。

 次に、災害派遣介護チームについてであります。

 被災時には、介護職員等を十分に確保できない事態が生じることから、現在、国において全国的な応援派遣体制の整備が図られております。チームへの登録や訓練、被災地への派遣等は都道府県が行うこととなっており、区市町村単位の連携は相互に派遣できる職員の確保に限界があり、困難と考えております。本区においては、東京都との連携に備え、区内事業者に対し、応援可能な人員の登録を呼びかけるとともに、本区が被災したときに速やかな派遣要請ができるよう、職員の不足や被災の状況などを把握する情報伝達体制を整備してまいります。

 次に、本区の業務継続計画についてであります。

 昨年六月、東日本大震災の教訓も踏まえて策定した本区の業務継続計画は、災害想定に基づき、各職場でシミュレーションを行い、各部が担う応急復旧業務と優先度の高い通常業務を定めております。参集した職員は、職層や通常の業務分担にかかわらず、部ごとに作成した職員行動マニュアルに沿って、これらの業務に着手することとしております。策定した業務継続計画は、職員の異動に伴う参集人員の見直しや本部運営訓練等の機会を通じて実効性の向上に努めているところであります。区では、今後とも地域防災計画の修正も踏まえつつ、業務継続計画につきましても、継続的に見直しを進めてまいります。

 次に、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法についてであります。

 本区において該当するものは、区道、都市公園、区管理河川など区所管の公共土木施設の復旧事業であります。区立学校につきましては、公立学校施設災害復旧費国庫負担法により復旧することとなり、また、病院については、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律が適用となるなど、いずれも公共性の高い建築物については、国の負担で復旧・復興が図れるものであります。こうした制度を十分に活用し、本区の復旧・復興を速やかに進めていくものと存じます。

 次に、災害時のトイレ対策についてであります。

 区では、下水道本管が破損した場合に備え、従来からポータブル式の簡易トイレやし尿を貯留できる便槽式のトイレを防災拠点に配備するとともに、三十一カ所の公衆便所と公園三カ所には地下タンク式のトイレを整備しております。また、再開発等において貯留式の災害用トイレの設置を事業者に指導し、これまで二カ所で整備を進めてまいりました。今後も、再開発に際しては災害用トイレの整備拡大に努めてまいる所存であります。こうしたトイレ整備とあわせ、家庭での備えも重要であることから、家庭用の簡易トイレを防災訓練で配布するほか、区民向け防災パンフレットで周知するなど、さまざまな機会を利用し、トイレ対策の普及啓発にも努めているところであります。

 次に、区のエネルギー施策についてであります。

 東日本大震災以降、創エネルギーや省エネルギーの積極的推進や自立分散型のエネルギーの確保など、新たなエネルギー施策の取り組みが求められており、エネルギー消費の多い本区は、率先して再生可能エネルギーなどの導入を推進していく必要があります。このため、本区では、自然エネルギー・省エネルギー機器導入費助成制度により、家庭や事業所への太陽光発電等の設置促進を図るとともに、区施設においても、今年度は明石小学校ほか三施設に太陽光パネルを設置するなど、再生可能エネルギーの積極的導入を図っております。また、再開発においては、中央区まちづくり基本条例の指導を通じて、再生可能エネルギーの活用促進を図っており、これにより太陽光発電を設置するなど創エネ・省エネ対策を講じたオフィスビル等が建設されております。今後は、こうした創エネ・省エネの取り組みをより一層推進するとともに、自立分散型エネルギーの確保に向け、現在取り組んでいる未利用エネルギー調査において、清掃工場排熱やバイオマスエネルギーの具体的導入の検討を進めるなど、本区のエネルギー施策の充実を図ってまいります。

 答弁は以上であります。

〔十八番 渡部恵子議員登壇〕

○十八番(渡部恵子議員)
 御答弁いただきまして、どうもありがとうございました。

 やはり震災というのは人の命がかかっていますので、大変重要な問題と考えています。本区がいろいろと施策を講じておられるということを、今、御答弁いただきまして、大変心強く、また社会的な脆弱性というところもきちっと把握した上での施策を徐々に講じておられるということで、大変心強く思っております。

 私が質問いたしました延焼防止のところなんですが、やはり木密地域が一部あって、中には火の粉が飛んで、結局、逃げおくれるという実験が出されていました。ですから、もし仮に一生懸命消火活動をしているうちに、いつの間にか逃げおくれてしまうようなことがないように、消火器の使い方等々も教えること、お伝えすることは大事なんですが、どの段階になったら逃げたほうがいい、逃げるに当たってはどこに逃げればいいのかということもきちんと、そうした住宅の木密している地域の方々にはお伝えする必要性はあると思います。

 それから、モデル地区を設けて、それで実践的訓練の準備を障害者の方たち、また高齢者の方たちに対して進められているということも大変ありがたいことでありますし、また、ぜひ今後の取り組みに対しても期待しております。

 それから、大切なことは、やはり備蓄をして食べるもの、飲み物はあったとしても、やはり人間は食べたら最後、今度は排出しなければ生きていけなくなってしまいますが、そのときにくみ取り式のタンクですと、今度はバキュームカーの問題が出てくると思うんですが、東京都内には恐らくバキュームカーはなくて、地方から来る場合、もし幹線道路等々で通れなくなったり、あるいは中央区だけにバキュームカーが来てくれるわけではないと思いますので、やはりくみ取り式でなくてもお手洗いが自由に使えるようなものも、先日、二日にはそうしたお手洗いのものも配布されていましたから、そのようなことも区民の方たちにお伝えいただければと思います。

 また、高層マンション等はオール電化のマンションも多いですし、恐らく大規模震災のときはエネルギーが、電力もとまってしまいますので、そうした場合はお手洗いを流すことができなくなります。ですから、高層マンションのお手洗い施策ということも、マンションのマニュアルづくりに取り組んでいらっしゃいますが、そのようなことも含めてお伝えしていただければなと思っております。

 やはりエネルギー施策、各行政いろいろとやっていらっしゃいますし、滋賀県は卒原発ということで取り組んでいらっしゃるということであります。本区は、矢田区長のもとに未利用エネルギーの方向へ、そして二一○○年に向かって、よりよい地球環境、そして東京、日本の環境を整えていくためにも、そのような施策を講じて、今から始めていらっしゃるということで大変期待したいところでございます。今後も、中央区の子供たちの未来のために、そしてよりよく生きやすい環境のために、そのような施策を講じていっていただきたいと思います。

 また、やはりBCP、要するに復旧・復興に一番時間がかかるんだということを今回、被災地へ行って勉強してまいりました。ですから、それこそ本当に時間がかかるものなので、ここの部分はやはり防災対策とは別に、より手厚く考えていかなければならないことなのかなと思いますので、さまざまお取り組み、各部署で大変だと思いますが、本当に何年もかかることになってしまうかもしれませんので、復旧、そして復興のシステムがしっかりと構築していけるような事業計画、継続していけるようにお取り組みをお願いしたいと思います。

 今後も区民の健康と福祉のために区行政の方々の手厚い施策を期待して、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)


○二十三番(増渕一孝議員)
 議事進行について動議を提出いたします。

 ただいま一般質問の半ばではありますが、この際、会議時間を延長し、あわせて暫時休憩されるようお諮り願います。

〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 ただいま提出されました動議は賛成者がありますので、成立いたしました。よって、直ちにこれを議題といたします。

 お諮りいたします。ただいまの動議に御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 御異議なしと認めます。よって、会議時間を延長し、暫時休憩いたします。

午後四時四十六分 休憩


午後五時十分 開議

○議長(石田英朗議員)
 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 一般質問を続けます。二番山本理恵議員。

二番 山本理恵議員登壇

○二番(山本理恵議員)
 無所属の山本理恵です。平成二十四年中央区議会第三回定例会の一般質問を、さきの質問通告に沿って行わせていただきます。区長並びに各理事者におかれましては、誠意ある御答弁をお願い申し上げ、質問に入らせていただきます。御答弁によりましては、再質問を留保させていただきます。

 総合治水対策についてお伺いいたします。

 昨年の大江戸まつり初日の雷雨を御記憶でしょうか。私は、この雷雨を契機に、改めて異常気象とその対策について問題意識を持たざるを得ないものでした。とりわけ、都市型水害に対する意識が不十分であることに思いをいたし、区民の生命と財産を守ることを務めとした一区議会議員としてのライフワークとして取り組むべきと考えました。

 気象庁の観測統計によれば、アメダス千地点での時間雨量五十ミリ以上の雨の回数は、一九七六年から一九八六年に百六十回、一九九八年から二○○九年には二百三十三回と、四五%の増加を示しております。また、ことしの七月、気象庁は、熊本県や大分県に対し、「これまで経験したことのないような大雨」と異常気象に関する表現方法を初めて使用するほど緊迫した状況がありました。

 東京都においても、近年、集中豪雨が頻発しております。平成二十年八月には、豊島区で下水道工事を行っていた作業員五人が流され、死亡する悲惨な事故がありました。また、平成二十二年七月には、板橋区で時間雨量百七ミリの集中豪雨を観測、石神井川がはんらんしたことなどは記憶に新しいところです。今後の都市型水害は、今までに予測し得なかった事態が起こり得るのではないでしょうか。

 東京都は、次のように都市型水害を定義し、その問題点、被害について言及しております。一、ヒートアイランド現象や地球温暖化が原因と言われる集中豪雨の発生、二、地表がアスファルトなどに覆われていることによる流域の保水・遊水機能の低下、三、地下利用などの土地利用の高度化が進んでいることによる被害の増大。集中豪雨については、河川や下水道の現在の目標整備水準である時間五十ミリを超える雨が増加しており、治水対策を実施し、浸水の被害の軽減を図ることが喫緊の課題とされています。

 また、都市化の進展による雨水・排水の下水道への集中化も問題です。二十三区の大半の地区では、下水道への雨水混入率が一○○%に近づいています。宅地化、道路や駐車場等の舗装化が進み、大半の雨水が地面に浸透せずに、下水道へ集中し、以前では十分であった下水道の排水能力を超えてしまうことも散見されます。

 そこで、本区の対応について何点かお伺いいたします。

 平成十二年七月には、中央区でも一時間八十二・五ミリの観測史上二番目の記録的な集中豪雨により、約三十件の地下室浸水などの被害報告がありました。また、昨年の夏は築地市場内の冠水を経験し、市場で働く人たちが協力して排水作業をしていたとのことです。四年前の一般質問で、豪雨に対する都の下水道の限界は、時間五十ミリであり、より大容量の下水道にしなければ危険であるとの問いに対し、都は、危険性が高い八重洲地下街対策として、時間七十ミリ対応の下水道を平成二十三年までに整備すると、区は答弁されています。この整備状況は、現状ではどのようになっているのでしょうか。

 さらに、東京都は、銀座駅地下街の安全対策も検討するとしていますが、現在の状況についてお知らせください。

 区内下水道は大正末期から整備が始まりました。特に、日本橋・京橋地域は早い段階から普及が進んだことから、耐用年数五十年を超える管が多く存在していると考えます。区では、老朽化対策や雨水処理機能向上を図る管渠の再構築など、区内の下水道整備状況をどのように把握され、東京都にどのように働きかけておられるのかお聞かせください。

 他区では、治水対策の一環として、水害の防止や軽減を図るとともに、地下水の涵養を促進し、自然環境の保全と回復を目指すため、開発や建築に際して行う流域対策の指導基準の策定や、雨水を地下に浸透させる施設の設置に対する助成を行っています。助成は、建物新築時や増改築時だけでなく、通常のますから浸透ますや浸透トレンチへの切りかえの場合も対象としています。本区においては、指導基準に対してどのようなお考えをお持ちでしょうか。また、雨水浸透施設設置助成事業に対する御見解をお聞かせください。

 次に、区民に対する情報提供についてお伺いいたします。

 独立行政法人防災科学技術研究所は、住民への情報伝達に関して二つの大きな問題があると指摘しています。

 一つ目は、豪雨情報をどう伝えるかという問題です。

 豪雨が観測されたとしても、現場の地方自治体の防災担当者、建設現場、鉄道・道路管理者、一般の方々に的確に情報を伝えなければ、災害は軽減されません。特に、局所的集中豪雨の場合、雨が降り始めてから二十分ぐらいで被害が発生するため、迅速に情報を伝える必要があります。

 二つ目は、予測の問題です。

 豪雨の発生がより早くわかれば、より効率的に防災活動を行うことができます。研究所は、コンクリートに覆われた都市部は急速に水がたまる。局所的集中豪雨では、降り始めてから十分が非常に重要である。降り出す前の予測で早期の避難につながり、被害が軽減できると分析しています。

 東京都では、降雨情報等の提供として、降雨状況や河川水位に関する情報をインターネットや携帯電話などでリアルタイムに提供しています。また、中野区などではライブカメラを設置し、川の水位観測情報を区内地図とともにわかりやすく情報提供しています。

 そこで、お伺いいたします。

 本区では、ホームページや安全・安心メールなどで情報提供をしておられますが、より詳細な情報を配信・リンクされるお考えはお持ちでしょうか。

 また、区内河川や運河の状況を映像で配信する、地下下水の状況をリアルタイム映像で中継するなど、映像を用いて即時的にデータや情報を出すことは可能と思われます。費用負担などを考慮しつつ、実行可能性を模索していただきたく考えますが、いかがでしょうか。御見解をお伺いいたします。

 次に、環境面からの対策について伺います。

 局所的集中豪雨の発生原因の一つに、積乱雲の存在が挙げられており、その積乱雲の勢力を強めたのは、自動車やビルの空調機からの人工排熱などにより、都市部の気温が高くなるヒートアイランド現象ではないかと指摘する専門家もいます。この百年間で東京の最低気温は四・五度、平均気温は三度上昇したとするデータもあります。

 地球温暖化防止対策やヒートアイランド現象緩和のために、屋上緑化や高反射率塗料により屋根などの表面温度を下げるクールルーフ、植物の蒸散作用により壁面温度の上昇を抑制する壁面緑化、ドライミスト装置の設置、道路の表面温度を下げる遮熱性舗装などを、公的な施設を中心にさらに拡充していくことが重要課題と言えます。これまでも区は、今申し上げた施策を実施、研究されておられると思いますが、現状を踏まえ、今後の対応や取り組みに対するお考えをお聞かせください。

 次に、風格あるまちづくりに向けた電線類の地中化・無電柱化の促進について質問をいたします。

 先日、区民の方から、「家の前の電柱や電線は、地震や台風のときに倒れたり、切れてぶら下がってくるおそれはないか」と不安の声をいただきました。私は、この御意見を聞き、意識を傾けると、何ともたくさんの電線が張りめぐらされていることに驚きました。日常生活の中で何気なく目にしていますが、電線によって私たちの生活に欠かすことのできない電気や電話、ケーブルテレビ、インターネットといった通信手段が供給されています。しかしながら、電線によって空が遮られたり、電柱によって歩道が狭くなったりしていることも事実です。

 国土交通省の調査では、ロンドンやパリ、ベルリンなど欧米の主要都市では、無電柱化がほぼ一○○%概成しているのに対して、日本全国の市街地における無電柱化率は約二%、東京二十三区で約七%と、整備が大きく立ちおくれているのが現状です。

 こうした中、東京都では、「二○二○年の東京」への実行プログラム二○一二において、首都高速中央環状線の内側のセンターコアエリア内における都道の無電柱化率を、平成二十二年度末六七%から一○○%にするとしています。本区でも、これまで計画的に無電柱化に取り組んでおられ、電気や通信を供給しながら災害に強い都市基盤の整備、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出などが図られていることと認識しています。とりわけ、東日本大震災を受け、大地震への不安が高まっている今、無電柱化の推進は特に重要なものと考えています。

 国土交通省によりますと、阪神・淡路大震災で最も被害の大きかった神戸地区では、地中化された電話回線ケーブルの被災率が○・○三%に対し、架空線は二・四%と、地中線の被害は架空線の八十分の一でありました。このように、地中化された電線は、架空線に比べ、大幅に地震で破損しにくくなるメリットがあり、火災や地震などの災害に強い情報ネットワークが構築され、信頼性が向上するものであります。

 そこで、お伺いいたします。

 現在、本区の無電柱化率は、国道、都道、区道を合わせて約四二%となっており、二十三区中一番と聞いています。今後も、区では無電柱化を推進していくと思いますが、区の認識をお聞かせください。

 無電柱化事業は、大規模な商業地域のまちの顔となるような通りの整備から、近年は地域活性化や高齢化など、社会ニーズの多様化により、生活道路などの比較的道幅の狭い道路も対象として広がっています。しかし、幅員の狭い道路において電線類の地中化を行うことは、地中に埋設されているガス管、水道管あるいは下水道管などの占用物件が問題となります。狭い道路にそれらのものを移設して、地中化するスペースを確保しなければなりません。さらに、電柱に載っているトランスを地下または地上のどこに確保するのか、電線共同溝のさらなるコンパクト化も課題です。

 江戸川区の平井地区で、関東で初めてのソフト地中化方式を採用した電線類地中化事業が行われています。この地区の歩道幅員は、両側に一・五メートルずつしかなく、街路灯や地上機器等を限られた歩道空間に設置する必要がありました。対応策として、電力地上機器と街路灯を一体化したポールトランスを設置し、道路上の省スペース化を実施するとともに、地域の景観に溶け込むデザインが採用されています。

 本区が無電柱化を推進していく上で、幅員の狭い区道での整備もあるかと考えます。狭い道路における整備を進めるため、今後とも研究や工夫を続けていくことが必要ですが、本区独自の工夫などがございましたら、お聞かせください。

 日本では、大正十五年に、初めて共同溝が試験的に整備されました。その後、国において、昭和六十一年度から無電柱化の計画が立てられ、平成七年には本格的な法整備として電線共同溝の整備等に関する特別措置法が制定され、電線共同溝の建設及び管理に関する事項が定められ、無電柱化の整備を推進しています。しかし、電線類を地中化する際の費用は、一キロメートル当たり四億円から五億円と莫大な費用が必要と言われており、また整備には長い時間もかかります。区の無電柱化事業に対する共同事業費国庫負担金として、国庫補助金が五五%、都費補助金二二・五%、区負担金二二・五%となっていますが、国の事業費は平成二十二年度で約八百億円程度であり、道路予算全体の予算規模四兆三千億円からすると、それほど大きな規模でないのが現状です。

 こうした中、本区では再開発が活発に行われ、まち並みは日々その姿を変えつつあります。この変化の渦中にある今だからこそ、安全で美しいまちをつくるため、明確な方針のもと、積極的な施策展開が大切です。例えば、つくられてしまった日本橋を覆う高速道路を撤去するには、大変な労力とお金が必要となります。そこで、再開発などの機会をとらえ、効率的な無電柱化のさらなる促進・拡充を期待していますが、区の方針についてお聞かせください。

 以上で一回目の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。

〔区長 矢田美英君登壇〕

○区長(矢田美英君)
 山本理恵議員の御質問に順次お答えいたします。

 初めに、地下街対策についてお答えいたします。

 東京都は、豪雨時における地下街の浸水対策の取り組みとして、日本橋のさくら通りの下に約三千立方メートルの貯留管を整備し、八重洲地下街対策を強化しております。これにより、一時間約七十ミリの降雨に対応可能となっております。また、今年度より、銀座駅の地下街対策として、一時間約七十五ミリに対応する貯留管設置の検討を開始したところであります。

 次に、区内の下水道の整備状況の把握についてであります。

 本区の下水道管の多くは、整備から五十年以上経過しているため、ひび割れなどによる道路陥没の発生や、都市化の進展により雨水等の処理能力に不足が生じております。そこで、東京都は、管の補修や下水幹線・支線の再構築工事を重点的に実施しております。また、震災対策として、防災拠点周辺のマンホールの耐震化や、液状化によるマンホールの浮上対策などを進めております。区では、毎年、東京都から下水道事業の取り組みや課題について説明・報告を受けるなど、現状把握に努めるとともに、その機会をとらえ、区内下水道整備の推進を要請しており、今後も働きかけをさらに強めてまいります。

 次に、雨水浸透施設設置助成についてであります。

 治水対策の一環として、貯留・浸透施設を整備することは重要な取り組みであると考えております。このため、本区では、開発や建築において、まちづくり基本条例や市街地開発事業指導要綱による指導を行い、貯留施設の整備を促進しております。また、区みずからも小学校や日本橋区民センターなどの公共施設に貯留施設を設置するとともに、道路の透水性舗装や公園や緑地の整備などにより、雨水の流出抑制を図っております。今後も、より一層の推進を図ってまいりますが、御提案の雨水浸透施設助成事業については、本区では助成対象となる個人住宅の建てかえが少ない上、規模も小さいなど、費用対効果の面から導入は難しいと考えております。

 次に、情報提供についてであります。

 豪雨などの都市型水害から区民の生命と財産を守るため、迅速で正確な情報提供が重要であります。区の取り組みとして、洪水ハザードマップや浸水対策のリーフレットによる情報提供のほか、ホームページ並びにメールによる気象情報・降雨情報等の配信などを行っております。一方、国土交通省は、局地的な豪雨の頻発を踏まえ、三大都市圏等に従来の広域レーダーに加え、降雨の状況をより早く詳細に観測できるXバンドマルチパラメーターレーダーを整備し、現在、試験運用を行っているところであります。このため、今後、国で進めているレーダーデータと区のメール配信との連携や活用について検討を行ってまいります。なお、河川情報等の映像配信について、東京都はカメラをはんらんの危険性がある箇所に設置しておりますが、本区の河川や運河並びに下水道幹線は、護岸の整備状況や構造から安全性が確保されているため、設置は考えていないという見解であります。このため、本区についても、独自に設置する必要性は現在のところ低いものと考えております。

 次に、環境面からの対策についてであります。

 都市部においては、ヒートアイランド現象の顕在化が深刻さを増しており、その対策を講じることが重要な課題となっております。そのため、本区では、公共施設の緑化や環境に優しい舗装技術による道路の整備などの施策を推進することにより、ヒートアイランド現象の緩和を図っております。屋上緑化や壁面緑化については、これまで本庁舎や月島区民センター等、多くの公共施設に整備しており、本年度は銀座中学校などで整備を予定しております。また、道路改修などにあわせて街路樹の植樹や遮熱性舗装、透水性舗装などを実施しております。遮熱性舗装については、これまで人形町通りや鍛冶橋通りなどの幹線道路で施工しており、今年度も清洲橋通りで施工する予定であります。今後も、これらの取り組みをより一層推進・拡充することでヒートアイランド現象の緩和等を図ってまいります。

 次に、電線類の地中化についてであります。

 災害に強いまちづくりや安全で快適な都市空間の創出等の観点から、電線類の地中化は積極的に進めなければならない重要な施策であると認識しております。このため、本区では従前より電力・通信事業者に無電柱化の実施を強く要望するとともに、平成十一年度からは電線共同溝の事業を開始し、現在、日本橋室町・本町地区で整備を進めております。また、昨年度からは築地地区、今年度からは日本橋茅場町地区で新たに着手したところであります。今後も、中央区無電柱化計画に基づき、災害時の道路障害物除去路線など優先度の高い路線から順次、計画的に整備を進めてまいります。

 次に、推進に向けた工夫などについてであります。

 幅員が狭い道路での電線共同溝の整備は、物理的・技術的に困難な面があり、技術革新やさまざまな工夫が不可欠であると考えております。こうしたことから、これまで電力・通信事業など関係方面に対し、技術開発の要請を行うとともに、コスト縮減の観点から、小型化したコンクリートボックスなどを積極的に採用しているほか、日本橋本町地区の一部では地上に設置する機器を比較的広い幅員の道路上に配置し、狭い道路での地中化を図るなどの工夫をしております。

 次に、再開発での整備促進についてであります。

 開発事業などの機会にあわせた電線共同溝の整備は、区財政負担の軽減や無電柱化率の向上などに有効であると認識しております。このため、晴海三丁目西地区や晴海二丁目の開発事業の中で整備促進を図ったほか、現在は日本橋室町東地区で整備を進めており、湊二丁目や勝どき五丁目地区においても予定をしております。今後も、中央区まちづくり基本条例に基づき、大規模開発事業者に電線共同溝の整備を要請するなど、機会を的確にとらえながら効率的・効果的な無電柱化の推進を図ってまいります。

 答弁は以上であります。

〔二番 山本理恵議員登壇〕

○二番(山本理恵議員)
 御答弁をありがとうございます。

 区は、水害に強いまちをつくるため、過去の被害データをもとに危険箇所を割り出して対策を講じ、区民へは防災意識をさらに高める啓発強化をされてきました。両者の確立に御努力されていることに、改めて敬意を表します。

 近年の市街化による雨水流出量の増加、ヒートアイランド現象やブロッキング現象等による集中豪雨と社会環境の変化に適切に対応することは、容易ではありません。豪雨対策の基本は、公助として河川や下水道の整備に加え、自助・共助を促進し、被害を最小限にとどめる減災対策であり、こういった家づくりやまちづくりを推進していくことであると考えます。水害発生状況の変化を予測し、長期的な見通しを立て、緊密な公民の連携体制をきちんと推進することが大切だと考えます。迅速で適切な取り組みを期待しております。

 電線類の地中化・無電柱化の促進についても御答弁もありがとうございました。

 安全・安心のまちづくりを推進する中央区として、災害に強いまち、安全で快適な歩行空間の確保、また美観の観点から、都心にふさわしい良好な景観の形成に向けて、重点地域、重点路線等を決めるなど優先順位をつけて、無電柱化を進めていただきたいと思います。

 また、整備においては、効果などについて区民の方にわかりやすく説明をしていっていただきたく、要望して質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

○議長(石田英朗議員)
 以上をもって一般質問を終わります。


○議長(石田英朗議員)
 次に、日程第二から日程第四までを一括して上程いたします。これに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 御異議なしと認めます。よって、日程第二から日程第四までを一括して議題といたします。

〔田野議会局長朗読〕


日程第二

 議案第五十五号 平成二十四年度中央区一般会計補正予算

日程第三

 議案第五十六号 平成二十四年度中央区介護保険事業会計補正予算

日程第四

 議案第六十九号 西仲橋架替工事(下部工)請負契約の一部変更について


○議長(石田英朗議員)
 提案者の説明を願います。

〔区長 矢田美英君登壇〕

○区長(矢田美英君)
 ただいま一括上程されました議案第五十五号及び第五十六号、平成二十四年度本区各会計補正予算並びに議案第六十九号、西仲橋架替工事(下部工)請負契約の一部変更につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。

 まず、各会計補正予算についてでありますが、今回の補正は、一般会計で二億二千四百六十八万九千円を、介護保険事業会計で四千五百三十三万円をそれぞれ増額するものであります。

 この結果、補正後の予算は、一般会計は七百九十一億九千四百五十七万七千円、介護保険事業会計は六十八億五千百二十六万七千円となるものであります。

 初めに、一般会計補正予算の概要について御説明申し上げます。

 歳入の都支出金は、保育所設置促進事業費補助金二千二十四万八千円と、待機児童解消支援事業費補助金五千四百九十四万円、合わせて七千五百十八万八千円の計上です。

 寄附金は、区立特別養護老人ホーム「マイホーム新川」に入所されていた方の遺言に基づき区が受領した福祉事業寄附金一千六百三十九万三千円の計上です。

 繰越金は、前年度からの繰越金一億二千百八十九万三千円の計上です。

 諸収入は、予防接種受託収入一千百二十一万五千円の計上です。

 次に、歳出について御説明申し上げます。

 まず、民生費は、来年一月に開設を予定している障害者グループホームに対する施設整備費等助成九百三十三万九千円、来年四月に開設を予定している私立認可保育所に対する開設準備経費助成九千五百七十四万三千円、合わせて一億五百八万二千円の計上です。

 衛生費は、法令改正により本年九月一日から「不活化ワクチン」を導入しましたポリオの予防接種に要する経費一億三百二十一万四千円の計上です。

 諸支出金は、歳入に計上した福祉事業寄附金を今後活用するための基金への積み立て一千六百三十九万三千円の計上です。

 次に、介護保険事業会計補正予算について御説明申し上げます。

 歳入は、前年度からの繰越金四千五百三十三万円の計上です。

 歳出の諸支出金は、前年度超過交付に伴う償還金四千五百三十三万円の計上です。

 以上、平成二十四年度本区各会計補正予算の概要について御説明申し上げました。

 次に、西仲橋架替工事(下部工)請負契約の一部変更について御説明申し上げます。

 この契約につきましては、昨年六月に御決定をいただいたところでありますが、地中障害物の除去等に伴い、工期の変更が必要となりましたので、本案を提出した次第であります。

 以上、よろしく御審議の上、御決定のほどお願いいたします。


○二十三番(増渕一孝議員)
 議事進行について、動議を提出いたします。

 ただいま上程されております議案第五十五号、議案第五十六号及び議案第六十九号は、企画総務委員会に付託されるようお諮り願います。

〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 ただいま提出されました動議は賛成者がありますので、成立いたしました。よって、直ちにこれを議題といたします。

 お諮りいたします。ただいまの動議に御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決します。


○二十三番(増渕一孝議員)
 議事進行について、さらに動議を提出いたします。

 本日の会議はこの程度とし、ただいま企画総務委員会に付託されました議案の審査の関係もありますので、明二十六日を休会とし、明後二十七日定刻に本会議を開かれるようお諮り願います。

〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 ただいま提出されました動議は賛成者がありますので、成立いたしました。よって、直ちにこれを議題といたします。

 お諮りいたします。ただいまの動議に御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(石田英朗議員)
 御異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれにて打ち切り、明二十六日を休会とし、明後二十七日本会議を開きますから、定刻に御参集願います。

 本日は、これをもって散会いたします。

午後五時四十六分 散会


署名議員
議長 石田 英朗
議員 木村 克一
議員 志村 孝美

お問い合わせ先:区議会議会局調査係 
電話:03-3546-5559

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